▼「選ばれる男たち」―女たちの夢のゆくえー
講談社 現代新書 信田 さよ子
本屋の棚を何気なしに眺めていたら「妻を見下す男たち、夫を見捨てる妻たち」という副題が目に飛び込んできたので衝動買いをしてしまった
著者はこの本を書いた動機として2つあげている
1つはアラカン(アラウンド還暦)の女性の視点から、同世代の男性たちについて述べてみたい
2つ目は、おばさんたちだって大好きな美しい男性(イケメン)たちについて書いてみたい
そしてこの2つの動機は根っこの部分でつながっているというのである
1つ目の同世代の男性たちについては男性優位社会やヒイラルキー社会の価値観やものの見方などについて述べながら下記のような言葉で手厳しく書き表している
「妻を見下す夫、正義を振りかざす夫、妻の話は無視する夫、挙句の果てに妻に守ってもらおうとする夫」と
この本の後半の部分はDV被害者であるクライアントの具体的状況が事例として書かれている
DVは暴力だけではない、無言も一種のDVであると書かれていてどきりとする
そんな男性が本当にいるのか!?と瞬間思いたくなるような事例が書かれている
読んでいるうちに自分にも身に覚えのあることが書かれていて身につまされる
2つ目のイケメンについてはイケメンが好きな理由として次のように書いている
おばさんたちは結婚生活の入り口では夫に夢の男を重ねたが、その夢は砕かれ、出口のところでは落差と志望感に打ちひしがれながらもサバイブ(生き延びる、生き残る)している
結婚生活という実態の中で夢破れたおばさんたちは、絶望のなかから自分たちの力で夢の男を構想し始めた
その構想した「夢の男」というのは「女らしい男」すなわち草食系男子である
おばさんたちも若い男の子、それも草食系がいいのである
具体的には「冬のソナタ」ヨン様現象であり、王子様現象であり、まとめると「ヨン様王子系現象」というのだそうだ
これは今、若者間でも広まってきているが、この現象は若者から見た父親世代へのアンチテーゼともいえるし、おばさんたちの同世代の男性へのリベンジ(逆襲)でもある
夢の男として描いた夫に絶望したことと「ヨン」現象はつながっているのである
著者はこの本の中で草食系を次のように説明している
「やさしくてよく気がつき、つるんとした肌をしている。美しい容貌をしていながらおもしろいことをしゃべって笑わせてくれる。いざとなれば自分のために尽くしてくれ、いっしょにいればほっとできて、それで居て楽しい。無理やりセックスなど強いることなく、ひたすら自分の望むようにしてくれる」
70歳を前にしての一熟年男性の読者としてどきりとさせられ、反省もした
今更遅すぎるかもしれないが「草食系爺爺」を目指すというのはどうだろう
イケメンはもともとから無理であるが、優しさはもてるのではないか・・
いっしょにいればほっとできる相方になれるのではないか・・・
無理なセックスは心配ないとして、相方の望みを察知して望むようにさせてやることは出来るのではないか・・・
ドンキホーテー的老いたる王子様を目指すのである
副題につられて読み始めてみたら、結構骨太の内容である
著者は臨床心理士としてカウンセリングをするかたわらアダルトチルドレン、家族問題、DV、虐待などに関する多くの著書を世に出している
読み応えのある新書であった
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2010.01.08:choro
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