▼映画「必死剣 鳥刺し」
藤沢周平の「隠し剣弧影抄」と「隠し剣秋風抄」の映画化
俳優もそうそうたるメンバーなので一見に値すると決め付けて勇んで入館
藤沢周平原作であるから、舞台は海坂藩
城内での能見物の場面から始るが、そこで殿様のお傍近くで物頭を務める主人公が殿様の愛称を殺めるというショッキングな場面から始る
豊川悦司扮する物頭は、愛妻を亡くして妻の姪とひっそりと暮らしている
義憤と死に場所を求めての行動と思われるが、殿様より下されたお裁きは打ち首でなく1年間の蟄居だけ
その後2年を経て、再度物頭に任命される
そこから新たなドラマが展開されて、最後にどんでん返しが待っている
どういうどんでん返しかは、ストーリーを含めて観てのお楽しみである
「鳥刺し」という剣法は、必死剣といわれ、その秘剣が抜かれるときは、遣い手は半ば死んでいる、といわれている
しかも主人公の物頭が編み出した秘法なのだ
その秘剣が最後に観られる
終わりの15分くらいは今までの藤沢周平原作の時代劇では観られなかった血なまぐさい立回りである
単なる時代劇物としてみれば、ストーリーも分かりやすいし、今までにない立回りも観られて満足できるが、藤沢周平物として観ると期待はずれの部分もある
藤沢周平物には、人間の生き方や親子、男女の愛のあり方などについて時代を超えて伝えるものがあった
あってほしいと期待している
この映画にも、武士社会のしがらみのなかで葛藤しながら生きていく主人公の生き方や、姪との男女の愛情の機微など、もっと膨らませて見せてほしかった
海坂藩物としていつものとおり景色は素晴らしい
心が和む
ま城内の廊下や部屋のセットが丁寧に作られており、重厚な時代感を与えてくれる
豊川悦司の演技はいつもの通り安心して観たが、姪役の池内千鶴の演技には目をひきつけられた
田中麗奈や蒼井優に通ずる実力のようなものを感じた
いつもの藤沢周平ものを期待して観ると少し裏切られた感じがしないでもないが、最後の剣の立ち回りは面白いし、ストーリーもわりやすくて熟年者には観たかいがあった映画
ボケ防止にはぴったりである
2010.07.30:choro
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