▼末期がん、その不安と怖れがなくなる日
樋野興夫 主婦の友新書
前回「自己開示」と題して芋煮会の席上、病院のベッドで考えた話をしたことを書いた
話し終わって、こんな話をしてまずかったかなと思っているときに、仲間のOさんがその場でプレゼントしてくれた本がこの本である
グッドタイミングで手渡された本なのである

著者は順天堂大学医学部付属順天堂医院で3ヶ月5回にわたり「がん哲学外来」と銘打った患者及びその家族と著者ががんについて語り合う場の「特別外来」を設けた
以来、対談した患者家族は300組になるという
昨年日経新聞でも「がん哲学外来」がシリーズものとして取り上げられたとき、ブログに投稿しているが「がん哲学外来の話」という著者の本も10回シリーズで紹介している(@2009・3・14〜I4・9)
著者はこの本で現在のがん治療・がん研究に欠けているのは哲学である
がん医療はがん患者の「「心」を支えるという部分で不十分であった
「心」という部分へのアプローチできるのは医学でも心理学でもなく、哲学であると結論づけて述べている
がん患者として治療を受けている身として全くその通りと実感している
結局は患者1人ひとりが自分で「心」の部分を埋めていくしかない
1人で本などを読んでやっていくか、患者の会のようなものに入って励ましあうだろう
そして今まで考えていなかった「人の生き死に」についてそれなんりに考えるようになる
そういうときにこの本は役に立つ
著者は
「患者たちは、ある言葉を聞いたとたん、すべてが解消したような晴れやかな顔を自分に向けてくれるようになった」
「この本は著者が実際に患者に語りかけたこと、患者から教わったことを土台として書いた本である」
と述べている
本は下記のような構成となっている
第1章「がんとの賢い暮らし方」
第2章「がんになって見えてくるもの」
第3章「がん細胞が教えてくれるもの」
第4章「だいじな人との貴重な時間」
第5章「友人としてできること」
がん患者として晴れやかな顔になり、勇気づけられることが記載されているのは主に第1章と第2章である
その中から印象に残る部分を抜き出してみる
○「「目下の急務」がわかれば不安はなくなる
何をおいても、いましなければいけないことは何かを考えれば、将来のことを不安に思っている暇はなくなる
○「未来でも過去でもなく「いま」を生きる」
わからない将来よりも、目の前にある「いま」をだいじにする。それが優先順位
○「いい思い出は、いまの活力」
思い出すという行為には、脳のなかの複雑にからまったネットワークをときほぐしてくれる効果があるかもしれない
原点にさかのぼっていろいろなことを考えていると、すっきりと気持ちの整理がつき、現在の課題に向かう勇気がわいてくる
○「今日が「人生最後の日」と思えばいい」
そう思えれば、少なくとも再発の不安はなくなる
○「八方塞がりでも天は開いている」
がんとの闘いは自分自身との闘い
自分と闘い、自分を支えられるのは、最終的には自分自自身である。そのことに気づいた患者は周囲の協力に感謝しつつ「自分もがんばるんだ」と覚悟を決める
そこから人間としてどう振る舞い、どう生きるのかという、最後の仕事、大切な仕事が始まる
がんになるかならないかを自分でコントロールすることはできない。しかしがんになったとき、どうふるまうか、どう考えるかは、自分でコントロールできる
がんになってからの生き方、がんと向き合いながらどう生きるかは、誰が決めるでもなく、自分自身が決めることである
○「がんは人を哲学者にする」
人はいつか死ぬものとわかってはいても、ふだん暮らしているあいだは、自分の未来が無限にあるように思ってしまう
ところががんのような大病を患うと自分の人生が限られたものであることを実感する
残された貴重な時間をいかに生きるかー そこに哲学的なテーマに直結するものがある
○「ムダを捨てれば頭も心もクリア」
頭の中から自分にとって不要なものを捨て去って、本当に必要なものだけが残っていく
クリアな精神状態は、ものごとを深く考えるのに、最も適した状態である
がんが人を哲学者にするその理由はここにある
○「命よりも大切なものを見つける」
命を1番大切と思う人は、死をネガティブにしかとらえられないのではないか
死も私たちの一部である
しは私たち全員に1つずつ与えられているとういう意味では命と同じである
どのようにして死を迎えるのか。それは私たちにとって、とても重要な仕事、最後の仕事ではないか
○「がんは生きる「Why」を考えるきっかけ」
がんのような病気になると「How」だけでは生きていけなくなる
なぜ自分がここにいるのか、自分とはいったいどんな存在なのか、人は人生の最後についてようやくこうした究極的テーマについて静かに深く考える時間を持てるようになる
○「ほんとうの自分を見つける旅」
がんを生きるとは究極の「自分探し」の旅なのだ
○「使命感があれば充実した日々」
自分が必要とされていると思えば役に立とうと思う
自分にしかできないことがあると思えば、自分のできる範囲で何かをとげようとする
たとえ大病で体は動かなくても、そういうことに人間は力を発揮する
著者はこのような話ががん患者の顔を明るくすると体験したにちがいない
これらの言葉を著者が自分に語りかけてくれたものとして受け止めがん患者の自らの生きる指針としてこれらの言葉を実践に移していく
芋煮会の自己開示で自分でもよくわかっていないような話をしてしまったが、「がんは人を哲学者にする」の通り哲学的思考に近づこうとする萌しなのだろう
この本を読んで勇気づけられただけでなく、自分の考えが大分整理され、これからの方向性が示されたように感じる
グッドタイミングにこの本をプレゼントしてくれたOさんに感謝である

→画像[ ]
2010.11.07:choro

とてもいい本ですね!
本の紹介をしてくださり、ありがとうございます。
とてもいい本ですね!「がんは人を哲学者にする」とはそうなのかもしれません。死を意識すると、いかに生きるかを真剣に考えます。これは誰しもの問題なのですが、なかなか身近には感じられないのが現実かもしれません。
私は今病気ではないにしろ、この先はわからない命だと思っています。交通事故で明日旅立つかもしれない命です。だから、いつ旅立ってもいいように、今日を精一杯生きようと思っています。それは気張らなくてもいいから時間を大切に生きようと考えます。みんな同じですよね!
2010.11.08:おちよ

普段から
戦後50年以上日本人は死を考えることに怠けてきたといわれています

大変な世の中になってきております
ここいらへんで生き死にについて考えれる世の中になってくれるといのですが

普段の生活のなかで考えていきたいですね
2010.11.08:朝朗

生き死に
こんな時代だからこそ、生き死にについて考えてみたいという思いが強くなりました。まだまだ自分は、恵まれすぎている。そのありがたさに感謝できていない自分が腹立たしいです。
2010.11.10:佐藤準一

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