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ある物の状態が一瞬にして別の場所に現れる”テレポーション”。
SF映画の夢の技術が、ミクロの世界で起きることを証明して見せた。
成功したのは、量子物理学者・古澤明、44歳。将来ノーベル賞との呼び声も高い。
古澤がテレポーションを使ってめざすのは、未来のコンピュータと呼ばれる「量子コンピュータ」だ。
それが実現できれば、新薬の開発や地球規模の気象予測など、あらゆる分野に画期的な進歩をもたらす。
道の領域を探る古澤の実験室は、失敗との果てしなき戦いの場だ。
何度失敗しても、そのたびに立ちあがり、振り出しからやり直す。
その姿勢はアスリートに似ていると古澤はいう。
「科学は最高のスポーツだ。ホームランを狙え」と。
科学はスポーツです。勉強は“腕立て伏せ・腹筋”という基礎トレーニングで、学生とか研究員クラスはプレーヤー。
大学の先生は監督で、その勝負のすべての責任を負うと。
監督である古澤の仕事は、研究のテーマを決め、選手を動かすこと。
古澤は、実験のやり方はすべて“選手”に任せる。出勤、退勤の時間も自由だ。
“選手”に求めるのはただ一つ、「頭脳より根性」。
「個々の人間の頭がいいとか悪いとか、能力というのは大差ないので、根性があれば多少頭の回転がイマイチでも、
ものすごい力を発揮します」
(プロフェッショナル仕事の流儀2より)
ここでいう根性とは、目標に挑み成し遂げようとする執念をいうのだろう。
いわゆる“浪花節的根性”では長続きしない。