灯台下暗し(その1)…“賢治”の待合室が泣いている!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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灯台下暗し(その1)…“賢治”の待合室が泣いている!!??
2022.11.12:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
賽の河原
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「“イ−ハト−ブ”賢治が生涯のほとんどを過ごした“花巻”。賢治の空想の世界の入り口でもあり、この待合室を“集い”の場として利用してほしい。そんな場所を賢治の世界で表現できたなら…」―頭上に掲げられた駅長名のメッセ−ジに感動しながら、当市のシンボル・フクロウ(市鳥)を模したレリ−フ「花巻駅マチアイ」をくぐると、縁起でもないが目の前には“銀河宇宙”どころか、賽(さい)の河原を思わせるような空間が広がっていた。壁に飾られた、銀河鉄道をイメージしたらしい写真がなおさら、そんな気持ちを強くした。
JR花巻駅の待合室―。味が自慢だった「駅そば」店はコロナ禍の前に閉鎖され、隣り合わせにあった洋菓子店もその後、撤退した。私が訪れた正午すぎ、薄暗い「マチアイ」には中年の男性と老婦人がぽつねんと座っていた。駅長の木村光一さんが言った。「私もそば好き。昼飯にはしょつ中、利用していました。常連はやはり、電車の乗降客。店の採算が取れないということは、裏返せば乗降客もそれだけ減っているということになります」―。交換した名刺の肩書にびっくりした。「LIVIT」(リビット)とあった。JR東日本東北総合サ−ビス株式会社(本社・仙台市)の愛称で、JR東日本の完全子会社である。
一方で、約40億円の巨費を投じた「駅橋上化(東西自由通路整備事業)」プロジェクトが大詰めを迎えている。市側によると、来年4月から5月にかけてJR東日本との間で「基本協定・基本設計」を締結し、来年度当初予算に所定の経費を計上したいとしている。この案件については「JR側の負担がほとんどない駅橋上化の裏には、新花巻図書館の駅前立地予定地(JR所有)の土地譲渡交渉を有利に進めるためのある種の合意があるのではないか」―。こんな“密約”疑惑がつきまとう中、今年9月から10月にかけて、市内15か所で市民説明会が行われた。この場でも市側の答弁は迷走を繰り返した。
「橋上化だけで発展するとは考えておらず、人口減少や中心市街地の衰退に少しでも歯止めをかけるために必要だということである」、「まちの発展は行政が何かやれば進むものではなく、民間に期待する部分も大きい。この事業により、まちが動いているという印象を持ってもらうことにより、活性化につながる」、「新図書館と橋上化が一体であると言っているのではなく、JR側は橋上化をやりたいと思っているからこそ、橋上化ができなかった場合、JR側に何らかの意向が生じることを懸念している」、「グランドデザイン(青写真)については、市がすべてを整備していくことは無理であり、民間による活性化が必要不可欠である」…
「まちが動いている」…。一体全体、実体の伴わない“霞(かすみ)”みたいな行政ってあるのか。上田東一市長がいみじくも言ったようにこれこそが「絵に描いたモチ」ではないのか。逆に言えば、ほっぺたが落ちそうな本物の牡丹餅を提供できないという事実をこの言葉は浮き彫りにしているのではないか。“密約”疑惑がますます、真実味をおびる所以(ゆえん)である。
ところで、通学などで現駅舎を利用する機会が多い高校生からはこんな声が相次いだ。「待合室が夜に暗いので明かりをふやしてほしい」、「コンビニの他にファストフ−ド店のようものを作ってほしい。お腹を満たせる場所があれば、駅が充実するのでは…」、「旧そば屋さんを改造して、子どもがホ−ム側を見られるスペ−スにすればよい」…。木村駅長が頭を抱えてつぶやいた。「私たちもテナント運営や鉄道業務などを受託する、いわば下請け。コロナ禍の今、新しい店子を見つけるのは容易じゃない。橋上化などは雲の上の話。利用者の不便を承知しつつ、電気代の節約などでしのぐほかない。県内の東北本線でいま、JR直轄の運営は一ノ関、北上、盛岡だけです」
橋上化が運用開始するのは計画通りに進んだとしても、6〜7年先。“賢治”の待合室は人も寄り付かない不気味な空間に成り果てようとしている。行政は将来を予測できない「動いている」観を演出する前に、高校生や木村駅長の“悲鳴”にまず、耳を傾けるべきではないか。そういえば、いつも閑古鳥が鳴いている空間がある。中心市街地のど真ん中にある「花巻中央広場」…こちらのお題目も「活性化」だったことを思い出した(コメント欄に関連写真を2枚掲載)
(写真は「そば処花巻」のシャッタ−は半分、下ろされたまま。閉店した洋菓子店のブラインドには「席の長時間占有」を禁止する貼り紙も=JR花巻駅で)
<追記>〜「ブルシット・ジョブ」(壮大なる無駄)の予感!?
「JRロ−カル線維持確保連絡会議」の初会合が今月8日に開かれ、県内6路線の沿線自治体が路線維持のために連携を深めていくことを確認した。2019年度の1キロ当たりの1日平均乗客数が2千人未満の赤字線は6路線10区間で、“賢治”の待合室が始発駅の釜石線(花巻―遠野間)は年間12億700万円に上ることが分かった。今後、JR側は赤字解消のための支援を自治体側に求めてくることも予想され、橋上化構想自体が“砂上の楼閣”にならないとも限らない。「ブルシット・ジョブ」(壮大なる無駄=11月2日付当ブログ参照)という嫌な予感が…