「陳情不採択」顛末記―会議録から(下):はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「陳情不採択」顛末記―会議録から(下)
2019.07.15:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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「辺野古移設が唯一の解決策」―。世界一危険と言われる米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の返還について、政府は一貫してこう主張している。つまり、この危険性を除去するためには辺野古新基地(名護市辺野古)を建設し、そこへ普天間基地を移設すしかないという「表裏一体論」である。ところが、今回の審査では「(陳情者が求める)辺野古新基地建設の中止と普天間の運用停止は矛盾する内容になっている」という珍妙な議論が展開された。たとえば、櫻井肇委員(共産党)や阿部一男委員(平和環境社民クラブ)は「この(矛盾)論にも一理がある。辺野古と普天間は一体的に捉えるべきだ」などとして、国が主張する「表裏一体論」に見事にはまり込むという体たらくを演じた。結果として、「普天間の固定化につながる」という国の“恫喝”(どうかつ)に屈したとさえいえる。その先に行き着くところは結局は沖縄総体に対する「無知・無関心」である。
基地の増強につながる辺野古新基地の建設中止と普天間基地の運用停止を同時に求めることは何ら矛盾するものではない。むしろ、沖縄の民意が反映された当然の要求でさえある。「世界一危険な普天間基地の今後のあり方について、日米安保の恩恵を等しく受け入れている日本全体として、国民的な議論を盛り上げてほしい」―沖縄からのこうした究極の問いかけは結局、委員たちには届くことはなかった。米海兵隊が駐留する普天間基地も元をただせば、1960年代に本土の反対運動で沖縄に移駐してきたという歴史認識も持ち合わせていなかったようである。一体全体、何のための陳情審査であったのか。「!?」印は意味不明の質疑や意見表明に絶句した際の私のシグナルである。
【質疑応答】
●阿部一男委員(平和環境社民クラブ=社民党系)
この陳情内容ですが、国民的な議論を通じて、沖縄の基地を全国でも持つべきだ、その負担を肩代わりするような覚悟を持つべきだ(!?)という意味にもなりますか。
●増子
そういうことじゃありません。実は小金井市議会でもその点が問題になり、内部で議論を重ねた結果「この意見書は米軍基地の国内移設を容認するものではない」という文言を入れることで、採択にこぎつけた経緯があります。つまり、肩代わりが前提ではなく、まず議論をしようではないか、と。沖縄の米軍基地問題を「自分事」として、まず向き合おうじゃないかということです。
●櫻井肇委員(共産党)
陳情というのは、あなたの個人的な発想で行うものではありません(!?)。議会としては誰に対して責任もって、どういう内容の意見書を提出するのか。そのことに責任を持たなければなりません。地方自治体(地方議会の誤りか!?)がどこに、どういう内容の意見書を出すのか、さっぱり分からないのですが…。
●増子
どうも話が伝わっていないようですね。(国民的な議論という)沖縄の民意を私は本土に向けられた問いかけであると理解しています。本土に住む一人の人間として、その問いかけに応えるべく、陳情内容を意見書の形にして総理大臣など関係者に提出すべきである、と。桜井さんはどうも誤解しているようですね。
●内館桂委員(市民クラブ)
沖縄の問題について、私は議員という立場ではなく(!?)、個人として非常に関心を持っています。ただ、当市議会にこの陳情が出されたということは、花巻市民にとってどのような問題を抱えていることになるのか―具体的に説明いただきたい。陳情者に対して、どれだけの花巻市民の賛同が得られているのか、(!!??)、詳しく教えていただきたい。
●増子
沖縄の民意というのは当然、ご存じのはずだと思います。これは本土の我われに向けられた問いかけであると私は受け止めています。それでさっきの「公益」(当ブログの上を参照)にからんでくるんですけれども…。いわゆる、花巻市民の安心・安全にとって、沖縄の米軍基地はどんな風にかかわりがあるのか、と…。ちょっと、質問の趣旨が分かりません。
●藤原伸委員長(総務常任委員会委員長、明和会)
参考人からの質問は許されませんので、了承願います。
●増子
質問の意味が分からないから、聞いたんです。さっき言ったように、日米安全保障条約は日本の全国民の安心・安全を担保するために日米両政府が結んだものです。そういう意味では、花巻市民もこの条約の恩恵に浴している。このことが議論の根幹です。市民の賛同ということに関して、私は知る立場にありません。逆に陳情の趣旨を市民に分かるように説明するのが、議会側の責任、使命ではないでしょうか。
●藤原委員長
他に参考人への質疑はありませんか。ないようですので、これで質疑は終わります。
【陳情審査】
●櫻井委員
辺野古新基地の建設中止と普天間基地の運用停止は矛盾するものではないかという意見が大勢を占めているようで、これも一理あります(!?!?)。この件については、沖縄県と国が誠意をもって協議を行うという意見書を提出するということではどうか。
●鎌田幸也委員(市民クラブ)
私も矛盾するように思います。ただ、沖縄県民の民意を尊重するという観点から、櫻井委員の意見書提出に賛同します。
●近村晴男委員(花巻クラブ)
辺野古新基地の建設中止という沖縄県民の民意は理解できます。ただ、普天間基地の運用停止ということまで踏み込めば、日米安保全体の問題になってきます。私たちがちょっと、口を出せない範囲かな(!?)、と思います。
●阿部委員
辺野古新基地の建設中止と普天間の運用停止ということは、一体的(!?)に考えることもできます。だから、これについては否決ということでも意味は分かると思います。
●内館委員
この陳情については不採択でいくべきだと思います。地方自治体の自決権など自治体の本旨はどうあるべきなのか―など花巻市民に丁寧に説明していく必要があると思います。私はこの基地問題についてはよく分かりませんが(!?)、市民にとって分かりやすい議論をしながら、これを決めていかなければならないと考えます。
●藤原委員長
他によろしいですか。盛岡(耕市、明和会)委員、横田(忍、市民クラブ)委員、菅原(ゆかり、公明党)委員もよろしいですね(異議なしの声あり)。これより、採決します。陳情を不採択にすることに賛成の諸君の挙手を求めます。全員、挙手でございます。よって、本陳情は不採択に決しました。
(写真は東日本大震災直後の議会傍聴席。議員たちがどう対応するのか―に内陸避難者の関心が集まった。満席だった傍聴席はいま閑古鳥。沖縄と同様、震災の記憶もいずこにか…=2011年6月定例会の際の議会傍聴席)