あぁ、無惨!?…「まん福」解体〜WSは百花繚乱の趣き:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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あぁ、無惨!?…「まん福」解体〜WSは百花繚乱の趣き
2021.10.21:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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「まるで、ゴジラだな」…。巨大な重機がうなり声を上げ、鋭い爪先が木造の建物をまるで舌なめずりでもするかのように次々と飲み込んでいく。かたわらの表示板には「旧料亭『まん福』解体工事/工期 令和3年9月1日〜11月29日/発注者 花巻市長 上田東一/請負金額 40,359,000円」…などと書かれている。85年の歴史が幕を閉じようとしている21日、更地化を先取りするかのように「跡地活用」ワ−クショップ(WS)が市役所で開かれ、行政区長や近隣住民、リノベ−ション関係者ら約20人が今後の利活用などについて、話し合った。
「華やかだったころがなつかしいねえ。宴席に座る芸者さんたちが口紅をなおしたり、あわててお色直しをしたり…」―。解体現場を目の前にしながら、私はすぐ近くにある化粧品店の女性社長が目を細めて語る往時の光景に思いを巡らせていた。1935(昭和35)年に開業されたこの老舗料亭の自慢は64畳の大広間。天井には樹齢2千年を超すとも言われる屋久杉の樹皮が使われ、床の間や柱には黒檀(こくたん)や紫檀(したん)などの銘木がふんだんに施されていた。当時はこの大広間で結婚式を挙げるのが市民の夢で、私の親戚筋でも結婚写真をまるで“冥途の土産”みたいに大事にしている年寄りたちが多かった。一方で、こんなエピソ−ドも―
通算41年間も議長職を務め、「スケ」さんの愛称で呼ばれた強者(つわもの)がかつて、花巻市議会にいた。「息をまいて反対論をぶっていた市議連中が次の日には素知らぬ顔で賛成に回る。スケさんに一杯飲まされたのさ」―。こんな“料亭政治”の舞台もこの老舗料亭だった。しかしその後、料亭離れに拍車がかかり、2010年に閉店に追い込まれた。市側は3年後、5,800万円で土地を取得、建物は無償で譲り受けた。その後、改修費用として約3,000万円を投じるなどして、民間活用を含め、その利活用を模索してきたが、耐震工事や消防設備に億単位の費用がかかることが判明。結局は解体の憂き目を見ることになった。
この日のWSに先立ち、布台一郎・財務部長から「まん福」前史の説明があった。料亭に生まれ変わる前の江戸期の約400年間、この地には寺院や花巻城の御給人屋敷や病院、果てはバプティスト教会などがあったことが明らかにされた。この立地について、「かつては西南からの攻めに対して花巻城を守る“裏鬼門”の位置にあり、眺望や利便性に恵まれていたことが多様な職種を生むことにつながったのではないか」と話し、教会立地に関わった人物として「小田代れん」という名前を挙げた。この女性は花巻・笹間が生んだ著名なキリスト者、斎藤宗次郎にも大きな影響を与えたといい、「不思議な巡り合わせとしか言いようがないが、100年前のこの日(10月21日)に小田代さんは76歳でこの世を去っている」という“秘話”を披露した。
知られざる「まん福」”秘史”に集まった参加者は身を乗り出すようにして聞き入った。その余韻を引きずるように「跡地」の利活用を話し合うワ−クショップ(WS)はまさに百花繚乱のようにアイデアが飛び交った。「この地は中心市街地に唯一、残された財産。将来のまちづくりの生命線とも言える」とある参加者が口火を切ると…。「映画館などの文化施設」「老人と若者が共存する地域づくりの拠点」「新図書館の建設」「駐車場」「屋台村」「賢治村」「避難所」「エコハウス」「スケボーパーク」「花巻ヒルズ」「キッチン村」「太陽光発電所」などなど。果ては「芸者坂」(置き屋)が飛び出すなど持ち時間が足りないほどの盛り上がりを見せた。次回は11月4日で、“アイデア合戦”の面白みが期待できそうだ。
一方、上田市長は旧まん福を取得後の2014年に就任。「前市政を引き継いだ責任ある立場だが、取得する際の調査が十分でなかったというのが正直な感想だ」と前市政への“責任転嫁”を強調してきたが、試されるのはむしろ今後の利活用の成果である。解体によって、更地になる面積はざっと3,840平方メ−トル。市中心部の一等地に位置する市有地は当面、ここだけとなる。私たち市民有志が立ち上げた「銀河の郷、輝く未来へ〜『イ−ハト−ブ』の実現を目指す花巻有志の会」(略称「イ−ハト−ブ花巻有志の会」)でも将来課題として「まん福」跡地を含む「花巻三大跡地の利活用」(新興跡地、花巻病院跡地)を掲げており、この由緒あるレガシ−(遺産)の有効利用について、広く市民の意見を求めることにしている。
(写真は解体が進む旧料亭「まん福」=10月中旬、花巻市吹張町で)