「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政〜対岸の火事にあらず!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政〜対岸の火事にあらず!!??


 

 「コモン(公共物)の収奪作戦」「1400枚の黒塗り公文書」「自治体のデタラメ行政」「役所VS.市民」「官製談合疑惑」「不存在」「民間委託の闇」…。こんな章立ての本書を読み進むうちに鳥肌が立つような感覚に襲われた。迷走を続ける新花巻図書館の“立地”論争の背後に同じ闇(やみ)がうごめいているのを感じ取ったからである。

 

 「その文書の裏側では、透明性のある行政とはほど遠い。何か尋常ではないことが、いまこの瞬間も着実に進行していることが、改めて感じられた」―。『「黒塗り公文書」の闇を暴く』の著者、日向咲嗣さんはまえがきにこう記している。本書は著者が6年の歳月をかけて、いわゆる“のり弁”の闇を暴いたスリリングなルポルタージュである。「陰の主役」「出来レース」「アリバイづくり」「寝耳に水」「内部告発」「逆ギレ」…。文中に散りばめられたこんな言葉の数々にこっちの肌感覚がいちいち反応した。足元のイーハトーブはなまきでも寸分たがわない事態が同時進行しているからに他ならない。

 

 「知性と感性を醸成する場」―こんなスローガンを掲げた「和歌山市民図書館」がオープンしたのは2020(令和2)年6月5日。レンタル大手のTSUTAYAや蔦屋書店を展開する「(株)CCC」(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)が指定管理者の、いわゆる“ツタヤ図書館”である。立地場所は南海電鉄(本社、大阪市)が再開発を進める和歌山市駅前で、総工費123億円のこの事業には国庫補助など巨額の公費が投じられた。「図書館が駅前活性化のダシに使われるのでは…」―こんなうわさを聞き付けた日向さんは関連資料の文書開示請求に踏み切った。

 

 段ボールにびっしり詰められた開示文書が送られてきた。1400枚以上の文書のほとんど(約92%)が真っ黒く塗りつぶされていた。送り主が新図書館建設を担当する当の「市民図書館」だったことに日向さんはショックを受けた。「実施設計会議」「図書館定例会議」「南海和歌山市駅周辺活性化調整会議」…。辛うじて判読できた文書からこれまで外部には知られていなかった組織の存在が次々に明らかになった。13回にわたって開催された「図書館定例会」に至っては議事録の96・76%が真っ黒だった。「何かあるな」…

 

 県と市に南海電鉄を加えた「活性化調整会議」がスタートしたのは新市長が初当選する直前の2014(平成26)年6月。首長の交代を機ににわかに浮上したのが市民図書館の「駅前立地」構想だった。そんな中、関係者への突撃取材や市民団体の協力、そして内部告発者の決死の覚悟によって少しづつ、闇の実態が白日の下にさらされた。例えば、公募前にCCCだけが市長相手にプレゼンをし、その席に再開発を担当する部署と図書館を所管する教育委員会のスタッフが同席するなど癒着の構造も浮き彫りになった。まるで、“宝さがし”みたいな解読を進めていくうちに、日向さんはこんな発言に遭遇する。

 

 「市民図書館を誘致したいし、タイミングを逸したくない想いがある。新市長に直接お話をさせていただいて、トップダウンで決断をお願いしたいとも思っている」(2014年6月27日付)、「本社の意向として、市民会館と市民図書館の両方があった方がコミュニティをつくりやすいが、優先順位が高いのは市民図書館」(2014年7月9日付、いずれも南海電鉄側)―。「“暗黒”行政は和歌山だけには限らない」と日向さんは被爆地・広島の事例も紹介している。

 

 「JR広島駅前か、平和記念公園近くの現在の公園地内か」―。当市が図書館の”立地”論争に揺れていたと同じ時期、広島市でも市民を二分する論争が続いていた。2021年秋、市側は平和記念公園に近接する中央公園内の市立中央図書館をJR広島駅前の商業施設へ移転する構想を突然、公表した。市民参画もないままの「寝耳に水」に市民団体が署名運動に立ち上がった。「国際平和都市にふさわしい図書館はどうあるべきか」という呼びかけに1万7千筆以上の反対署名が集まった。一方、移転計画の経緯を知るために求めた開示文書はここでも真っ黒けだった。

 

 日向さんはこう書いている。「最初から結論が決まっていて、どんなに市民から批判されようとも、立ち止まって再考したり、丁寧に説明したりすることもなく、なりふりかまわず、その結論に向かって邁進していく。そんな広島市のこの問題での姿勢は、大量の公文書の黒塗りという目に見える形で現れたのだった」―。私は無意識のうちに「広島市」を「花巻市」と読み替えていた。「公共交通の利便性や駅周辺の活性化(賑わい創出)」―。こんなうたい文句の「駅前」移転案は2026年度の実現を目指している。まるで、当市と瓜二つの構図ではないか。

 

 「花巻市情報公開条例」(平成20年3月制定)はその目的について、高らかに謳う。「この条例は、地方自治の本旨にのっとり市民の知る権利を尊重し、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民の市政への参加を促進し、開かれた市政の推進に寄与することを目的とする」(総則)…よくもまぁ、真っ黒く塗りつぶしたくなるのはこっちの方である。

 

 

 

 

(写真は“暗黒”行政にメスを入れた日向さんの著書)

 


2025.01.13:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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