「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外〜市民を欺く「背信」行為!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外〜市民を欺く「背信」行為!!??



 

 「思い切ったプランを持ってきた。図書館と親和性の高い事業で、駅利用者や来街者で賑わうイメージ。地域の人が集えるイメージである」―。「花巻市まちづくり勉強会」の最終回が開かれた2018(平成30)年10月3日、市側は「花巻/新図書館プロジェクト」(計画資料案)と銘打った資料をJR側に提示した。しかし、22枚にのぼる肝心の本文部分は全部、黒塗りされていた。おそらく、この闇(やみ)の中にこそ、外部には知られたくない“不都合な真実”が書かれているにちがいないと思った。

 

 「花巻市まちづくり勉強会」と「花巻駅周辺整備調査定例会」が解散された直後の2019(平成31)年1月9日、今度は副市長をトップに据えた「新花巻図書館整備プロジェクトチーム」(PT会議)が立ち上げられた。図書館整備に特化した形の組織で、2022(令和4)年7月6日まで10回の会議を持っている。公民連携の手法で紫波図書館などを手がけた(株)オガールの代表取締役、岡崎正信さんがオブザーバーとして参加するようになったのは(平成31年)4月24日以降の3回の会議。以下の発言に見られるように、専門用語を駆使した岡崎さん主導型の図書館構想が次第に輪郭を見せつつあった。

 

 「公共性や花巻らしさがあるものがベスト。電車通勤者の住宅の需要もあり、高校生も多いので塾やカフェも必要」、「市側としては、どんなテナントが良いか。図書館との親和性を持ったものを考えたい」、「JRから土地を借りて、まちづくり会社を作り、SPC(特別目的会社)を立ち上げ、市はまちづくり会社とSPCに出資。JRにはAM(投資用資産などの管理業務)とPM(不動産の管理や運営の代行業務)を担ってもらう」、「発表で地価が上がる恐れもある。タイミングを考える必要がある。テナントについては再考が必要だが、住宅と賃料をどれだけ安くできるか、再検討する」…

 

 「新花巻図書館複合施設整備事業構想」―。岡崎さんをアドバイザーに迎えた約9カ月後の2020(令和2)年1月29日、私が「1・29」“事変”と名づける、いわゆる住宅付き図書館の「駅前立地」構想がまさに青天の霹靂(へきれき)のように天から降ってきた。50年間の定期借地権を設定した上で、賃貸住宅を併設するというこの構想案は蜂の巣をつついたような騒ぎに発展した。上田(東一)市長本人はたぶん、大向こうを唸らせる“サプライズ”だと思っていたにちがいない。それが完全に裏目に出た。コロナ感染症が日本で初めて確認されたのはちょうどその2週間前。ソーシャルディスタンスと3密防止が叫ばれる中、図書館“迷走劇”はコロナ禍と並走するようにして泥沼化していった。

 

 「駅前の賑わい創出?まるで、今次のパンデミックに逆行するような図書館論議ではないか。50年たったら、撤去しなければならない公共施設など聞いたことがない。」―。議会側は直ちに「新花巻図書館整備特別委員会」を設置。市民の意見を聞くために急きょ、開かれたWS(ワークショップ)ではこの案に賛意を示す参加者がゼロという前代未聞の結果に終わった。岡崎さんに丸投げされた形の、いわゆる”上田私案”は1年も持たずにその年の11月12日、住宅併設と定期借款の部分の撤回に追い込まれた。ちなみにこの際、岡崎さんに支払われた業務委託料はざっと500万円にのぼった。

 

 図書館に複合的な付加価値を付けることを求めていたJR側の攻勢がこの前後から目立つようになった。当時の会議録や復命書にはこんな強気の発言が載っている。

 

 「住宅が上に乗ることで、賑わいの観点でプラスアルファがあるという意味合いもあり、今回協力することにしているので、それが変わるとなると振り出しに戻る可能性があると思う」(令和2年8月26日付)、「大元の『賑わいのある図書館』というところから、借地(50年間の賃貸借)プラス複合施設ということを想定して協議させていただいてきたと認識している。その後だんだん、(JR)用地を買うことを検討するとか、図書館単体という形など状況が色々変わってきているので、根本的な部分が心配である」(同10月9日付)…

 

 「駅前か病院跡地か」―。一見、中立性が担保されてきたかのような“立地”論争も黒塗り公文書の裏側から見れば、一貫してJR主導型で進められてきたことが手に取るように分かる。その主従関係を象徴するような発言がある。“サプライズ”構想が暗礁に乗り上げつつあった時期、市側はひれ伏すばかりにこう、訴えている。

 

 「お願いの部分ではあるが、市が土地を購入することについて、再検討してもらえないかというのが1点目である。2点目は定期借地とは違い普通借地は期間を更新することになるので、普通借地権を設定してもらえないかということである。3点目は定期借地権の期間について、50年という期間が短すぎるという意見もある。この期間を長くすることは出来ないかという相談である」(令和2年9月14日開催のPT会議)

 

 全文黒塗りの「花巻/新図書館プロジェクト」には一体、何が描かれていたのか。「思い切ったプラン」と胸を張ったその“のり弁”にはおそらく、行き交う人々で賑わうJR花巻駅前のイメージ図が付されていたはずである。そのシンボルともいえる、住宅付き図書館の「駅前」立地構想がコケてしまった。ある意味で、絵に描いたような“失政”劇である。

 

 「図書館と橋上化とは別物のプロジェクト」と言い続けてきた上田市長がこの攻防戦の後、ポロリと本音をもらしている。「JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(令和4年6月開催の市政懇談会での発言)―

 

 「駅橋上化事業の見返りが図書館の駅前立地だった」―“のり弁”の背後から次第にこんな構図が輪郭を伴って、姿を現してきた。社有地の売却には一貫して否定的だったJR側は駅橋上化の基本協定の締結を受ける形で令和5年12月、駅前用地(スポーツ店敷地)の譲渡に応じるという方針転換に踏み切った。ある意味、双方にとっての“手打ち式”だったのかもしれない。

 

 あの“サプライズ”騒動からさらに5年が過ぎた。いま、「駅前と病院跡地」に絞られた立地場所の意見集約が大詰めを迎えている。しかし、その前提になる候補地の事業費比較では病院跡地の”災害リスク”がことさらに強調されるなどその公平性に疑念が生じている。さらに、最終的な意見集約をする「対話型市民会議」の応募参加者はわずか75人(実際の出席者は第1回目が65人、第2回目が64人)で、民意を反映するにはほど遠い構成になっている。

 

 一方、昨年12月21日に開催された第2回市民会議では二つの建設候補地をめぐるフィールドワークが実施されたが、参加者はたったの9人。「我こそは」と手を挙げたという、これが市民会議参加者の実際の姿である。50年どころか「百年の大計」とも呼ばれる文化施設―図書館の立地。その現場に足を運ばずして、建設候補地の「メリット・デメリット」を判定しようという、その傲慢さに私は怒りさえ覚えてしまう。「知の殿堂(図書館)に対する冒涜(ぼうとく)ではないのか」と…。他方、「病院跡地」への立地を求める市民グループの署名数は北海道から沖縄まで(宮沢)賢治愛好家や図書館ファンを含め、その数は10,269筆にのぼっている。この数値の歴然たる乖離に目を凝らしたい。双方を比べること自体が愚行というものである。

 

 和歌山市や広島市がそうであったように、当市イーハトーブはなまきの図書館問題も結局は「駅前再開発」と一体化した“不動産”案件…賑わい創出のための“ダシ”にすぎなかったのだろうか。だとすれば、この5年間に費やされた膨大な時間と莫大な金はドブに捨てられたも同然の税金の浪費(ブルシッド・ジョブ=どうでもいい仕事=壮大なる無駄)…つまりは市民に対する“背信”行為だったと言わざるを得ない。

 

 それにしても、市側はなぜこれほどまでに「駅前」立地にこだわるのだろうか。「ワンセット」構想がもたらす相乗効果によって、駅前の賑わいを創出したい―。最初からそう説明した方が市民の納得が得られやすかったのではないのか。なのになぜ…。何か表には出せない事情でもあったのであろうか。「黒塗り公文書」の闇の向こうにもうひとつの「闇」がほの見えてくる。さらにどす黒い何かが…。“暗黒”行政という名のトンネルの先には何が待ち受けているのだろうか。注目の市民会議の最終回は1月26日(予備日は2月15日)に開催される。

 

 

 

<蛇足>〜「黒塗り公文書」というミステリー

 

 黒塗り公文書の「闇」と格闘しているうちに妙な醍醐味みたいな感覚を覚えるようになった。たとえるなら、推理小説のなぞ解きに挑戦するような…。なにせ、100枚近くに及ぶ、いわゆる“のり弁”の肝心の部分は隠されているのだから、この謎解きはまさに「当たるも八卦当たらぬも八卦」―。もしも、私の見立てが見当違いだったら、是非とものり(海苔)をはがして、弁当の中身を見せて欲しいものである。とくにも、22個の“のり弁”の中にはどんな「マル秘」(隠し味)が隠されていたのかを…

 

 

 

 

(写真は旅先の仕事部屋を占拠した、100%黒塗りの“のり弁”の山。その数は何と22個にも)

 


2025.01.20:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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