沖縄から日本への…「新しい提案」:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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沖縄から日本への…「新しい提案」
2018.12.26:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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「辺野古新基地建設の中止と普天間基地代替施設について国民的議論を深め、民主主義および憲法に基づき公正に解決することを求める」―。12月6日付で東京都・小金井市議会(五十嵐京子議長、定数24)から、首相並びに衆参両院議長、総務・外務・国土交通・防衛の各大臣、官房長官、沖縄担当大臣あてに、上記のような全国の地方議会で初めてとなる画期的な意見書が提出された。以下にその全文を掲載するので、まずその内容を読んでいただきたい。
※
沖縄県名護市辺野古において新たな基地の建設工事が進められていることは、日本国憲法が規定する民主主義、地方自治、基本的人権、法の下の平等の各理念からして看過することのできない重大な問題だ。普天間基地の海兵隊について沖縄駐留を正当化する軍事的理由や地政学的理由が根拠薄弱であることは既に指摘されており、沖縄県議会はこれまで何回も政府に対して「在沖海兵隊を国外・県外に移転すること」を要求する決議を可決採択している。
「0・6%に70%以上の米軍専用施設が集中する」という沖縄の訴えには、「8割を超える国民が日米安全保障条約を支持しておきながら、沖縄にのみその負担を強いるのは、『差別』ではないか」という問いが含まれている。名護市辺野古に新基地を建設する国内法的根拠としては、内閣による閣議決定があるのみだ。沖縄の米軍基地の不均衡な集中、本土との圧倒的格差を是正するため、沖縄県内への新たな基地建設を許すべきではなく、工事は直ちに中止すべきだ。
また、普天間基地の代替地について沖縄県外・国外移転を、当事者意識を持った国民的な議論によって決定すべきだ。安全保障の問題は日本全体の問題であり、普天間基地の代替施設が国内に必要か否かは、国民全体で議論すべき問題だ。そして、国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという世論が多数を占めるのなら、民主主義および憲法の精神にのっとり、一地域への一方的な押し付けにならないよう、公正で民主的な手続きにより決定することを求めるものだ。なお、この意見書は米軍基地の国内移設を容認するものではない。
よって、小金井市議会は国会および政府に対し、以下の事項による解決を強く求めるものだ。
1、 辺野古新基地建設工事を直ちに中止し、米軍普天間基地を運用停止にすること
2、 全国民が責任をもって、米軍基地が必要か否か、普天間基地の代替施設が日本国内に必要か否か当事者意識を持った国民的な議論を行うこと
3、 国民的議論において普天間基地の代替施設が国内に必要だという結論になるのなら、沖縄の歴史および米軍基地の偏在に鑑み、沖縄以外の全国の全ての自治体を等しく候補地とし、民主主義および憲法の精神にのっとり、一地域への一方的な押し付けにならないよう、公正で民主的な手続きにより解決すること
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
※
思想的によほど偏向している人を除いては、上記意見書に異議を唱える声は少ないと思う。では、なぜこんなにも「当たり前」の訴えが本土やその議会でこれまで閑却されてきたのか。その前に横たわるのが「NIMBY(ニンビ−)」(Not in my backyard=わが家の裏庭に来てもらっては困る)という、ある意味では当然の住民感情である。これを断罪するのは簡単であるが、今回の意見書はその壁に穴をあけようという新しい試みである。しかし、可決に至るまでは紆余曲折があった。
9月定例会の段階で陳情に賛成した共産党市議団(4人)が意見書提出の段になると急きょ、反対に回った。陳情文の中に「(普天間基地の代替施設について)沖縄以外の全国のすべての自治体を等しく候補地とする」という文言があったため、同議員団は「我が党は安保破棄・全基地撤去が基本的なテ−ゼ」と主張。一時は意見書見送りが懸念された。結局、「米軍基地の国内移設を容認するものではない」という一文を入れることで合意に達し、13対10の賛成多数で上記意見書は可決された。
「沖縄に基地があるのは仕方がない」(本土の保守・無関心層)という自己正当化と、「沖縄にいらない基地は日本本土のどこにもいらない」(共産党をはじめとする革新層)―。この二つの主張は一見対立しているように見えていて、実は沖縄の基地の固定化をその根底で補い支え合っているという点では同根である。私自身、当時花巻市議だった2010年12月定例会で今回の陳情と同じような趣旨で、「普天間飛行場の訓練の一部を受け入れる考えはないか」と当局の見解をただしたことがあった。共産党市議団から意想外の反論が浴びせられた。「女性暴行など米兵による犯罪と騒音被害は想像を絶しており、花巻市民がそれを受け入れなければならない理由などない」―。”対岸の火事”を決め込む姿勢に腰を抜かしたことを覚えている。
今回、陳情を提出した沖縄出身で小金井市在住の米須清真さん(30)はこう述べている。「(意見書は)国内への基地移設が前提ではなく、『本土』の人たちに自分の問題と考えてもらい、国民的議論につなげるためのものです」(10月14日付「朝日新聞」)、「小金井市の市議たちが陳情内容に真剣に向き合ってくれた結果だ。全国各地で取り組みが広がれば…」(12月7日付「琉球新報」)…。小金井市議会の対応は花巻市議会の玄関払いの扱いに比べれば、大きな第一歩といえる。
「沖縄発/新しい提案」の実行委員会責任者で司法書士の安里長従さん(46)は「辺野古移設の理由は『軍事的な理由でなく、本土の理解が得られないから』という本土と沖縄の不合理な区分に問題の根本がある。差別の問題だ。…きちんと自由と権利の問題だと伝えなければならない」(12月3日付「琉球新報」)と話し、その考えをまとめた同名の著作の中では「日本への民主主義の提案です」と記している。そう、民主主義の実践を呼びかける実に素朴な訴えにもかかわらず、それに背を向け続ける本土(ヤマト)への異議申し立てでもある。私はこの問題を議会で提起した際、「不道理」という言葉をあえて使った。「『沖縄』問題のことごとくが道理に合っていない」と考えたからである。
「辺野古新基地建設」の工事を県民投票(来年2月24日)まで止めるよう求めるホワイトハウスの請願サイトの署名が目標の10万筆を突破し、1月7日の期限までに20万筆を超えるのは確実な情勢になっている。日本国憲法(第16条)も国民ひとり一人に請願(陳情)権が付与されていることを定めている。民主主義を構築するための、その行使こそが大切な一歩になるはずである。
(写真は世界一危険な基地と呼ばれる米軍普天間飛行場。この返還の交換条件とされているのが名護市辺野古への「移設」計画である=インタ−ネット上に公開の写真から)
《注》〜日本国憲法第16条
何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、 平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。
《追記》〜ブログ休載のお知らせ
妻の喪中に当たるため、年末年始をはさんだしばらくの間、当ブログを休載させていただきます。来年こそ我が「ヒカリノミチ」に新たな光明が差し込むことを願いつつ…。良いお年をお迎えください。