「宮沢賢治」という演繹法…ホワイトハウス請願、20万筆突破。一方で「辺野古」無法:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「引き取り論」や国民的な議論を促す「新しい提案」(2018年12月26日付当ブログ参照)など沖縄の米軍基地に対して、本土(ヤマト)側がどう向き合うべきかという関心が一部で高まりつつあるが、大方のヤマトンチュにとっては右(保守)も左(革新)も、上(政府)も下(一般国民)も相変わらず、「知らぬが仏」を決め込んでいるようである。その点、童話作家で詩人の宮沢賢治と同郷の私は幸か不幸か、この天才にからめて取られて身動きができそうもない。かつて、私は最大限の敬意を払いつつ、この大先輩を「不世出の詐欺師」と呼んだことがある。なぜって、その呪縛(じゅばく)からいまだに逃れられないでいるのだから…
そのからくりを仮に賢治流の「演繹(えんえき)法」…つまり、“三段論法”と名づけてみようと思う。賢治のセリフで一番、人口に膾炙(かいしゃ)している言葉は詩「雨ニモマケズ」と『農民芸術概論綱要』(序論)に出てくる次のメッセ−ジである。教科書などにも取り上げられ、ほぼ全国民的に受容されていると言っても過言ではない。その一部を採録してみる。
●「東ニ病気ノコドモアレバ、行ッテ看病シテヤリ/西ニツカレタ母アレバ、行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ/南ニ死ニサウナ人アレバ、行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ/北ニケンクヮヤソショウガアレバ、ツマラナイカラヤメロトイヒ…」(「雨ニモマケズ」)
●「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」(農民芸術概論綱要から抜粋)
これらの文言をひと言でいえば、「(弱者への)寄り添いと世界平和」ということであろう。小学生でもわかる理屈である。東日本大震災の際、全世界からボランティアが被災地にかけつけた。「賢治に背中を押された」という声のなんと多かったことか。米国や英国の追悼集会で朗読されたのも「雨ニモマケズ」だった。でも、油断してはならない。イラク戦争を「正義の戦い」と言ったのは当時の米ブッシュ大統領だったし、最近では我が宰相も「(沖縄に)寄り添う」などと何とも口幅(はば)ったい。脇道にずれてしまったが、この三段論法を借用したのは実は私だった。花巻市議会の2010年12月定例会で、当時議員だった私と市長との間で次のような問答が交わされた。
増子:「賢治の言葉は花巻の人間なら小学生でも知っていますし、市長自身もことあるごとにこの言葉の大切さを口にしています。これを裏返せば、沖縄に基地を押しつけている限り、わたしたち本土の人間の真の幸せも達成されないということだと思います。賢治精神の真髄は弱者や被差別少数者に寄り添うまなざし、共感のまなざしです。『イ−ハト−ブ(賢治が目指した理想郷)はなまき』の実現を標榜する本市としては、当然、こうした問題に向き合う際の視点も変ってしかるべきだと思います」
市長:「賢治さんのこの言葉は戦争のない世界の到来を希(こいねが)ったもので、その意味では憲法第9条の精神にも通じると思います。たとえば、いまの現実の沖縄の武装関係(米軍基地の意)を本土のほかの自治体が受け入れるということになれば、その世界平和の精神に反することになるのではないかと思うわけです。つまり、米軍の基地またその支援をするようなことを日本国内あちこちでやるということ自体が、これは世界平和とは矛盾するのではないか、いわゆる賢治精神に矛盾するのではないかということを申し上げたわけです」
この時の真逆の答弁に私は一瞬、虚を突かれる思いがした。原理的(あるいは教条主義的)には一理ある。だがしかし、そこには大きな落とし穴が仕掛けられているのではないか。「戦争は平和である」―。英国人作家、ジョ−ジ・オ−ウェルが小説『1984』の中に記したダブルスピ−チ(二重語法)の比喩を思い出したのである。この種のフェイクニュ−スはいま、至るところに転がっている。ポスト・トゥル−ス(脱真実)、オルタナティブ(もうひとつの事実)…。言葉の収奪が加速している。そして、「賢治精神」さえも沖縄へ背を向ける便法にすり替えられるというご時世である。
オ−ウェルはこうも言っている。「自由は屈従である」「無知は力である」―。沖縄総体に対する本土側の「無知」(=知らぬが仏)こそが沖縄に対する強権政治(安倍一強)を底支えしているというオ−ウェルの逆説に今こそ、学ばなければならない。真の意味での“詐欺師”が誰であるのか、勘(かん)の働く人ならばもう、お気づきのことだろう。「市民パワ−をひとつに歴史と文化で拓く/笑顔の花咲く温(あった)か都市(まち)イ−ハト−ブはなまき」―。花巻市が掲げる将来都市像が泣いている。そろそろ、看板を塗り替えたらと思うのだが…。ちなみに30年前のこの日は昭和天皇が逝去し、翌1月8日から「平成」が始まった節目の年に当たる。
(写真は賢治の命日に奉納される郷土芸能。この日、「雨ニモマケズ」詩碑の前には賢治愛好家が全国から集まる=2017年9月21日、花巻市桜町4丁目の詩碑前で)
《追記ー1》〜英国人ギタリストで天文学者のブライアンさんも呼応。署名締め切りは12月8日午後2時(日本時間)
米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設で、県民投票が行われるまで埋め立て工事を中止することを求めるホワイトハウスの請願署名で、英ロックグル−プ、クイ−ンのギタリストで天文学者のブライアン・メイさんがSNS(会員制交流サイト)のインスタグラムとツイッタ−(短文投稿サイト)で署名への協力を呼び掛けている。自身も署名をしたとみられる。
クイ−ンは故フレディ・マ−キュリ−さんがボ−カルを務めていたイギリスのロックグル−プで、「ボヘミアン・ラプソディ」や「ウィ−・ウィル・ロック・ユ−」など数多いヒット曲で知られている。現在、沖縄県内でも公開されているクイ−ンの伝記映画「ボヘミアン・ラプソディ」が全国的に大ヒットしている。メイさんは映画では音楽プロデュ−サ−として関わっている。
メイさんは署名を日本時間で7日に行ったとみられる。「緊急」と書き出し、「美しいサンゴ礁とかけがえのない生態系を保存するために」とし、署名に協力するよう求めている。ツイッターなどでは新基地建設に反対している人々が「すごい」「ありがとう」「うれしい」などの投稿をして反応。「ブライアン・メイが署名を呼びかけてる!まだ署名していない人は今すぐぜひ!」「まだ間に合う」「20万以上を目指そう」と締め切りまで署名協力の拡散を図ろうと呼び掛けている。【1月7日付「琉球新報」電子版】
《追記―2》〜ホワイトハウス請願、20万筆を突破
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設計画を巡り、米国ホワイトハウスの請願書サイトを利用してトランプ大統領に埋め立て工事を止めるよう求める請願書に賛同する署名は、開始から1カ月の期限となる日本時間8日午後2時までに約20万筆が集まった。署名運動はホワイトハウスの請願サイト「WE the PEOPLE」で昨年12月8日から始まり、開始11日目で10万筆を超えた。請願書は辺野古移設の賛否を問う2月24日の県民投票までの工事中止を求めているが、署名が1カ月間で10万筆を超えれば、米政府は何らかの回答をすることになっている。
呼びかけ人でハワイ在住の作曲家、ロバ−ト・カジワラさん(32)にはホワイトハウスから連絡があり、米政府から回答があるまでは署名を続けられるという。このため、期限前には20万筆にわずかに届かなかったが、その後も署名は増え続けて20万筆を突破。サイトでは5番目に多い署名となっている。 カジワラさんは毎日新聞のメ−ルでの取材に「多くの人々が辺野古を守りたいと思っている証拠だ。世界中の人々が沖縄を支援し、辺野古のサンゴ礁を救うことに関心を持っていることを証明している」とコメントした。
署名運動はツイッターなどのソ−シャル・ネットワ−キング・サ−ビス(SNS)で拡散され、沖縄出身タレントのりゅうちぇるさんやモデルのロ−ラさんらが賛同したほか、英ロックバンド「クイ−ン」のギタリスト、ブライアン・メイさんも「沖縄のサンゴ礁の破壊を止めるための請願書に署名する最後のチャンス」と協力を呼びかけた。【1月8日付「毎日新聞」電子版】
《追記―3》〜「辺野古」無法…刃物を振り回す海上保安官
沖縄の辺野古新基地の埋め立て現場で、警備に当たる海上保安官が抗議するカヌ−船団のつなぎロ−プをナイフで切断するという暴挙が起きた。芥川賞作家で連日のようにカヌ−による抗議行動を続けている目取真俊さんのブログ「海鳴りの島から」(1月9日付)の中で、動画を含めた暴挙の光景が詳しく公開されている。私が現場を訪れた昨年12月初旬(2018年12月6日・7日付当ブロブ参照)、埋め立て用土砂を積みこむ民間の「琉球セメント」桟橋の国道沿いにはカミソリの刃を張り付けたような、通称「カミソリ鉄条網」と言われる有刺鉄線が張りめぐらされていた。本土(ヤマト)の「知らぬが仏」を良いことに辺野古の無法状態は極に達しつつある。