花巻市議会が死んだ日―陳情者に対する“人権侵害”発言と不採択”誘導”発言!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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花巻市議会が死んだ日―陳情者に対する“人権侵害”発言と不採択”誘導”発言!!??


 

 先の花巻市議選(7月24日)の際、一部で選挙公報の未配布があった問題で、その原因や実態の調査を求めた陳情の審査が9日開催の総務常任委員会(高橋修委員長ら9人)で行われ、委員長をのぞいた7人が不採択を選択。採択賛成者は一人だった。陳情者は市内在住の翻訳家、菊池賞さん。自らへの選挙公報が未配布だったため、「全戸配布」を定めた公職選挙法(第170条)と同じ規定を定めた市条例を根拠に、首長による監査請求(地方自治法199条)を要求する内容。傍聴に訪れた私は目の前で繰り広げられた委員会の光景に「この議会は死んだな」と心底、そう思った。

 

 「配布担当の区長は配ったということなので、未配布だったという陳情者の話をそのまま、一方的に信じることはできない」―。共産党花巻市議団所属の櫻井肇議員のこの発言に私は正直、卒倒しそうになった。市選管側がすでに少なくとも菊池さんへの未配布を認め、謝罪をしているにもかかわらず、である。まるで、”ウソつき”呼ばわりするこの発言はまさに陳情者に対する「名誉棄損」であり、明らかな「人権侵害」…小学生でも分かるイロハではないか。頭が混乱した。「人権擁護の先頭に立つべきはずの、革新を名乗る人物がまさか…。人格をおとしめることに平気の平左の議員がこのイーハトーブ議会にいたとは!?」。このあからさまの”差別”発言にきちんと、異議申し立てをする議員がいなかったことにもびっくりした。まともな議事運営を心がけるなら、まず委員長注意があってしかるべきなのに、それさえもなかつた。

 

 一方で、布石があった。説明員として呼ばれた岩間裕子・総合政策部長は滔々(とうとう)とこう述べた。「仮にこの陳情が採択されたとしても、(上田東一)市長が監査を求める可能性はほとんどないと思う」―。まるで、不採択へと誘導しようとするこのミエミエの発言にふたたび、卒倒しそうになった。市長の代理人として、その意向を伝える「佞臣」(ねいしん=中国などの史書に出てくる言葉で、主君にこびへつらう心のよこしまな臣下)の姿を目の前に見た思いがした。「誰に呼ばれて、陳情審査に来たのか。発言が逸脱しているとは思わなかったのか」と私。「議会側から招請されましたので…」と岩間部長。地方自治の根幹を支える、当局と議会とが互いに監視し合うという「二元代表制」が音を立てて崩れ落ちるのを実感した瞬間だった。

 

 こうして、不採択への道すじが着々と整えられていった。ほとんどの議員がこの「岩間」誘導発言を不採択の理由にしていた。そして、その先導役を果たしたのはまたしても件(くだん)の”人権侵害”議員と社民党系の阿部一男議員(平和環境社民クラブ)だった。そういえば、私が新人議員の時、議員のあるべき姿について、能書きを垂れたのもこうした”革新系”のご仁たちだった。「イーハトーブ議会における、いわゆる『革新』の研究」をテーマにしている学者がいると聞いた。ぜひ、この摩訶不思議な構図を分析してほしいものである。花巻市議会の名誉のためにただひとり、採択に賛成した羽山るみ子議員(はなまき市民クラブ)の意見陳述を以下に掲載する。そうでもしなければ、議員を選ぶ我われ市民の側があまりにも惨めではないか…

 

 

 今回、選挙公報の未配布がはっきりとしている方は1名だということですが、わずか1名であっても未配布はあってはならないことであり、だからこそ選挙の公平性を担保するために、公職選挙法にも「全戸配布」が明記されているわけです。「たった1名」という数に矮小化せず、逆にその1名の方の権利を守るという認識こそが、民主主義の原則だと思います。

 

 さらに、今回の陳情の趣旨は現場で実際に公報の配布に携わった人の責任を問うというものではなく、逆によくありがちな、末端の現場に責任を押し付けるといういわば、“トカゲの尻尾切り”を避けるため、陳情者は「内部統制」という言葉で、危機管理の必要を訴えたものだと理解します。

 

 そのためにも、しっかりとしたマニュアル作成やチェック体制などが必要であり、今後このようなことが起きないよう取り組むべきと考えます。そしてまた、今回の陳情をきっかけに選挙の大切さを市民の皆さんにも認識していただくことが、どんどん低下している投票率のアップにも繋がるのではないでしょうか。以上のことから採択すべきと考えます。

 

 

 

(写真は陳情審査で意見陳述する菊池さん。その右前方が櫻井議員=9月9日、花巻市議会委員会室で)

 

 

 

《追記ー1》〜公務員としての市議の使命(憲法第15条)

 

 「憲法15条1・2項は、国民主権の原理の下における、全ての公務員の地位と制度の基本理念である。公務員はその選定および罷免が国民の固有の権利に属する。そのため国民は議会の代表者である公務員を選挙により選任する。また、その他の公務員についても『全体の奉仕者』であり、その選定罷免が国民固有の権利である以上、公務員の究極の使用者は国民であるから、国民主権原理の下、国民の代表者たる国会・地方議会が公務員の組織・事務・勤務条件等の決定権限を有すべきことは、議会制民主主義から導かれる憲法上当然の要請だと解される」

 

 

《追記―2》〜請願(陳情)権(憲法第16条)

 

 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、 平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2022.09.09:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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