新花巻図書館をめぐる“利権の構図”(下)…イ−ハト−ブに巣食う「ステ−クホルダ−」〜利権に群がる人脈図!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「もし可能なのであればスポ—ツ用品店敷地を市有地にして、図書館を建てるというのが駅前案の中でも最も望ましい方向だということを私は主張させていただいている。…あの場所に図書館を建てて橋上化と一緒に西口の利用も皆さん交渉してもらったプランを反映させてつくりあげて行くというのが 一番良いんじゃないかなと」(会議録から原文のまま)―。この発言は昨年9月20日に開催された「新花巻図書館整備基本計画試案検討会議」(座長・市川清志生涯学習部長)で、有識者委員のひとりである公益財団法人花巻国際交流協会の佐々木史昭理事長が「駅前立地」を主張した際の内容である。佐々木理事長は同じ会議で次のような発言も口にしている。
「商工会議所の一員としてコメントさせていただくと、地方経済というのは、やっぱりどうしても安心を求めたり名前を求めたりして大手、大手というように行きがちなんですけれども…岩手県内でも立派な仕事をしている建設会社はありますし、花巻市内の会社でもあるので、ぜひそういう皆さんにおかれましても、できれば地域のしっかりした会社ができるのであれば地域の会社にやってもらって、そこに皆さんもコンタクトしていただいてつくり上げていくというマインドを大事にしていただきたいというように思います」(会議録から原文のまま)―
「ステ−クホルダ−」という業界用語ある。“利害関係人”という意味で、端的に言えば「委託―受託」関係がそれにあたる。ところで、花巻国際交流協会の佐々木理事長は一方で花巻商工会議所副会頭の肩書を持ち、同時に鉄道事業などに実績がある「(株)中央コ−ポレ—ション」(花巻市内)の代表取締役社長の地位にもある。上記の二つの発言はこうした立場の違いが言わせしめた内容で、正直と言えば全くその通りである。
主として、JR側の鉄道事業などを請け負う独立行政法人「JRTT鉄道・運輸機構」(前身は日本鉄道建設公団)は鉄道周辺の工事の安全確保のため、「線路近接工事安全対策」を定め、工事に参入できる有資格名簿を公表している。花巻市内で工事資格を有する企業は全部で11社でこのほか、コンサルタントなどの役務資格のある企業が2社となっている。この中の1社が「(株)中央コ−ポレ−ション」で、図書館の駅前立地が実現した場合、優先的に工事を請け負うことができる立場にある1社である。さらに、同社は駅自由通路や橋梁工事にも実績があり、上田東一市長が強力に進める「JR花巻駅橋上化(東西自由通路)と図書館の駅前立地」がワンセットで実現すれば、この二つの巨大プロジェクを同時に受注できるという仕組みにもなっている。
また、有資格企業13社の中には前・元副市長が役職者として名を連ねる2社が含まれているほか、ほとんどが市側と深い請負関係にある。ちなみに今回、文書開示請求をして入手した「JR交渉」の回答書(8月17日付当ブログ)にも立地場所に予定されているスポ−ツ用品店の撤去に当たっては「線路近接に係る施工方法について、当社と確認を行う」―との条件が課せられている。
市当局がなぜ、これほどまでに「駅前立地」にこだわるのか―。その謎を解くカギのひとつが本件の“利害関係人”であるJR東日本と花巻市、事業参入の資格を有する企業の三者の「利害」関係である。分かりやすく言えば、「自社所有地をなるべく高値で売却したい」(JR側)―「駅橋上化と図書館のワンセット効果で駅前活性化(賑わい創出)を実現したい」(市側)―「(駅橋上化と図書館を合わせた)総事業費がざっと80億円にのぼる巨大プロジェクトを受注したい」(有資格企業)…この三者の利害が一致する場所は「JR花巻駅前」しかないというわけである。
新図書館問題が迷走を繰り返すきっかけになったのは3年以上前の「住宅付き図書館」の駅前立地(2020年1月29日)という“青天の霹靂”のような突然の計画発表だった。立地場所に50年間の定期借地権を設定し、上階に住宅を併設するという手法に議会や市民から反対の声が上がり、結局は住宅と定期借地権の部分は撤回された。その直後から突然、高校生たちが駅前立地を望んでいるという、確たる根拠もないままの“若者待望論”が市側から盛んに喧(けん)伝されるようになった。いま考えれば、若者たちも結局は利権行政の“人質”(政治利用)だったということが言える。
「駅前を希望する意見が多かった」―。上田市長が最終的に図書館の駅前立地を決断したのは冒頭の検討会議の意向を受けてのことだった。その方向性を主導したのが「国際交流協会理事長兼商工会議所副会頭」の肩書を持つ人物だったことがHP上などで公表されている公の事実から明らかになった。仮にもうひとつの候補地である病院跡地に立地する場合、制限なしの「一般競争入札」に付さなければならない。その分、入札機会もオ−プンになり、透明性のある競争原理が期待できる。これに対し「駅前立地」の場合、最初から建設業者や設計業者が限定されるといういびつな構造になっていることが今回、浮き彫りになった。
背後にもっと複雑は事情があると思いきや、実際は「図書館はどうあるべきか」という本質論をそっちのけにした、利害関係者による“利権争い”だったということが白日の下にさらされた格好である。文化の殿堂ともいわれる「図書館」を食い物にした“利権人脈”はその経緯を市民(納税者)に明らかにすべきであろう。
(写真は「風の鳴る林」など宮沢賢治をイメージしたメルヘンチックな駅前は“利権争い”の舞台になっていた=花巻市大通りで)
《追記ー1》〜「もう、タオルを投げたくなった」!!??
花巻市議会9月定例会の一般質問が4日から始まり、伊藤盛幸議員(はなまき市民クラブ)が懸案の新花巻図書館問題について、「JR交渉のその後の動きはどうなっているか。駅前立地に伴うまちづくりの展望をどう描いているか」などとただした。これに対し、市川清志生涯学習部長が「花巻の玄関口として、集客効果が期待でき…」と例の“耳だこ”答弁を繰り返すと、伊藤議員は「その内容は以前にも聞いている。質問に答えていない」と食い下がった。でも、“百万遍念仏”を聞かされているようで、どっちもどっちもだなとため息がもれた。私を含めた市民が一番知りたいのは、市側がなぜこれほどまでに駅前立地にこだわり続けるのか。誰もが納得できるその合理的な理由は何なのかーということなんですよ。
《追記―2》〜ホテルも活性化にひと役!!??
「銀河ル−ム」や「山猫ル−ム」それに賢治ゆかりの品々を集めた「宮澤賢治探検本部」…。JR花巻駅前の目と鼻の先に位置するホテル「グランシェ−ル花巻」が今年3月、賢治を模したメルヘンチックな雰囲気に姿を変えてリニュ−アルオ−プンした。同ホテルは30年前、国土交通省(当時建設省)の駅前開発事業「レインボ−プロジェクト」を導入し、花巻商工会議所会頭などを歴任した故宮澤啓祐氏が起業した。
その後、老朽化やコロナ禍の中で営業不振に陥っていたが、「駅前活性化に寄与したい」というホテル業界大手の「(株)リオ・ホ−ルディングス」の意向を受け、花巻市当局が全面支援する形で国の「高付加価値化事業」補助金などを運用して再建にこぎつけた。「駅前活性化」という観点では図書館の駅前立地の位置づけと軌を一にしている。「新図書館×駅橋上化×新装ホテル」―この“三位一体”のまちづくり構想を背後で支えているのが実は「利権の構図」であることがここからも見て取れる。