元旦を直撃した大地震…「天災は忘れた頃に」〜3・11から足かけ、13年!?:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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元旦を直撃した大地震…「天災は忘れた頃に」〜3・11から足かけ、13年!?


 

 新しい年の出鼻をへし折るようにして襲いかかった「令和6年能登半島地震」…刻々と広がる被害の実態におののきながら、私はあの東日本大震災の地獄のような光景をまなうらに浮かべていた。有志数人で立ち上げた支援組織「いわてゆいっこ花巻」は震災5か月後の2011年8月11日、当市出身の宗教学者、山折哲雄さんを招き、「3・11大震災とイーハトーブ」と題した講演会を開催した。山折さんは「天災は忘れた頃にやってくる」という寺田寅彦の有名な言葉などを引用しながら、「天然の無常」について語った。その内容はそのまま今回の悲劇に重なる、いやそれを「予言」していたとさえ思える。以下に当時、当ブログに掲載した文章(要旨)を再録する。

 

 

 「仏の影もお地蔵さんの姿も感じられなかった。賽(さい)の河原の光景とはこういうものだろうか。心底、地獄だと思った。」―。宗教学者の山折哲雄さん(80)は4月中旬、被災地に足を踏み入れた時の気持ちをこう切り出した。講演会場を埋め尽くした聴衆は身を乗り出すようにして聞き入った。「津波が去った後の海はキラキラと輝き、瓦礫(がれき)の向こうには美しい稜線が見えた」と山折さんは続けた。

 

 東日本大震災から5か月目の11日、花巻市文化会館で開かれた講演会―「3・11大震災とイ−ハト−ブ…岩手の風土から復興の原点を問う」には花巻へ転入した沿岸被災者を含め、900人以上が詰めかけた。山折さんは冒頭の自然が抱え持つ2面性について、物理学者で随筆家の寺田寅彦(1878〜1935年)を引き合いに出して次のように話した。

 

 「この世に永遠不滅なものはない。寺田はそれを『天然の無常』と表現した。自然に抗わずに頭(こうべ)を垂れる。そういう太古からの感情が日本人の体には染みついている。ハリケ−ンに襲われた時、米国人は怒り悲しみ、もがき苦しんだ。それに比べて今回の大震災の被災者の表情は取り乱すこともなく、穏やかだった。寺田がいう『無常観』が根底に横たわっているからではないか」、「長い時を経て日本列島に築かれた文明の本質を自然科学と人文学の両面から分析した先駆者の一人が寺田だった。自然災害と科学技術のあり方とそこに立脚する日本人の精神性についての鋭い分析を今こそ思い起こさなければならない。寺田が生きていたら、地震列島の上に原発大国を築くような愚(ぐ)は決して許さなかったはずだ」

 

 山折さんは「このジレンマに一番苦しんだのは花巻が生んだ宮沢賢治ではなかったのか」と述べ、自伝的な作品と言われる『グスコ−ブドリの伝記』を引用しながら、講演会を次のように締めくくった。

 

 「法華経の熱心な信者で科学者でもあった賢治は冷害で苦しむ農民を救出するため、火山を人工的に爆発させ、温室効果によって空気を暖めようと考えた。しかし、爆破するためのスイッチを押す要員として一人は火山に残らなければならない。その役割を買って出たのがブドリ、すなわち賢治だった。寅彦の天然の無常、賢治の自己犠牲の精神から学ぶべきは自然に対する畏敬(いけい)の念ということだと思う」

 

 「『3・11』はさらに生者同士の横の対話以上に犠牲者との対話の重要性を教えてくれた。死者の声を聞こうという縦軸の対話のル−ト…私はこれを生者と死者との『対魂関係』と呼んでいる。今回の大震災の復興は死者に寄り添う、この対話を通じてしか道行きを見出すことができないと思う」ー。「東日本大震災の犠牲者は一人ひとりがブドリなのだ」という声を最近聞くようになった。この言葉を思い出しながら、「3・11」の深淵に耳を傾け続けなければならないと、そう肝に銘じた。

 

 

 

 (写真は当時のポスタ−。「言葉は無力です。そばに寄り添って祈りしかない。悲しみを共有できない。負い目を背負うしかない」という山折さんの言葉も)

 

 

 

 

《追記ー1》〜原発が稼働していたら!!

 

 

 9割近い家屋が倒壊するなど壊滅的は被害を受けた石川県珠洲市では中部電力などが2014年の稼働を目指した「珠洲原発」の建設を計画していたが、28年間にわたる地元住民などの粘り強い反対運動が実り、2003年に計画は凍結された。原発反対の最前線で活躍する青木美希さんの『なぜ日本は原発を止められないのか?』を再読する(2023年11月17日付「当ブログ」参照)

 

 

《追記―2》〜岸田首相の年頭記者会見…原発質問に聞く耳なし!?

 

 

 「地震から3日も経過して、いまだに総理が原発についてひと言もコメントしないのは異常です。質問させてください!」と記者。進行役は「本日中に担当宛てにメールでお送りください。後日書面で回答させていただきます」。それでも記者はあきらめずに「総理、原発再稼働はあきらめるべきではありませんか?地震大国の日本で原発の再稼働は無理だと今回分かったのではありませんか!答えてください」と大声で質問。首相が一礼して会見場を後にしようとすると、記者は「聞く力はどこに行ったんですか!!」とひと際大きな声で問い掛けた。

 

 この記者の訴えに「日本中学生新聞」の公式X(旧ツイッター)は、「ぼくも同じ考えだ!年末年始と新聞第2号で、COP28の原発のことを書いている時に地震が起きた。そして、今日、女川原発2号機の再稼働を5月ごろ目指すと記事が出ていた。どうかしてる!地震が起こるたびに、怯えている国民がいることが分からないなんて」と投稿した(5日付「日刊スポーツ」電子版、要旨)

 

 

《追記ー3》〜「役立たず」という役

 

 

 「死者84人 安否不明179人へ」(5日付「朝日新聞)ー。能登半島地震の惨劇を報じる同じ一面の常設コラム、鷲田清一さんのこの日の「折々のことば」はサックス奏者、坂田明さんの「ミジンコにはミジンコの都合がある」。この伝で坂田さんは「『役立たず』と言われる人も『役立たず』という役を確(しか)とやっているのだ」と。なるほど、この未曽有の”国難”の中で、わが身の保身だけに汲々とするわが宰相こそがその「役立たず」という役割をちゃんと、果たしているというわけである。

 


 

<署名延長のお知らせ>

 

 

 新花巻図書館の旧病院跡地への立地を求める署名運動は全国の皆さまのご協力により、4,730筆という予想以上の賛同をいただくことができました。支援者の一人として、感謝申し上げます。行政側の動向が不透明な中、主催団体の「花巻病院跡地に新図書館をつくる署名実行委員会」(代表 瀧成子)は引き続き、全国規模の署名運動を続けることにしました。締め切りは2024(令和6)年1月末必着。送付先は:〒025−0084岩手県花巻市桜町2丁目187−1署名実行委員会宛て。問い合わせ先は:080−1883−7656(向小路まちライブラリー、四戸)、0198―22−7291(おいものせなか)

 

  署名用紙のダウンロードは、こちらから。 「全国署名を全国に広げます!〜これまでの経過説明」はこちらから。署名実行委員会の活動報告などは「おいものブログ」(新田文子さん)の以下のURLからどうぞ。

 

 https://oimonosenaka.com/

 

 

 

 

 

 


2024.01.02:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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