「中立的なファシリテーター」という怪…迷走が極まる新図書館の行方!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ
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「意見集約が困難な中、その集約の方法について、外部の中立的なファシリテーターの判断を仰ぎたい」―。駅前か病院跡地かの立地問題に揺れる新花巻図書館を巡って、市側はまるで統治者能力をかなぐり捨てたような暴挙に出た(5月14日付当ブログ参照)。様々な行政課題について、市民の多様な意見を集約して合意形成を目指すというのが行政運営の原則である。ところが、今回の「公募プロポーザル(企画提案)」方式の採用はその原則自体を放棄し、肝心の合意形成を第三者に丸投げしたに等しい。
市側の説明によると、市議会6月定例会(6月7日開会)に約1,000万円の予算を計上し、8月上旬に事業者(ファシリテーター)を選定し、そこで提案された集約手法を使って、10月から3回程度意見集約の場を持ちたいとしている。この際のポイントは集約対象である市民の範囲をどう設定するのかということである。統計学上、民意を正確に担保するためには、全市民を対象にした「全数調査」か無作為抽出による「標本調査」が必要となるが、その点も明らかにされていない。さらには、ファシリテーターの選定基準や選定方法なども未定のまま「まずは予算措置」という拙速ぶりに驚いてしまう。何をそんなに急ぐのか。
一方、意見集約に当たっては10月中旬をメドに進められている「候補地比較調査」の結果も参考にするとしている。しかし、この業務を受託した「(株)大日本ダイヤコンサルタント」はJR各社の鉄道事業などを一手に請け負う独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(JRTT鉄道・運輸機構=前身は鉄建公団)の有資格業者であり、この比較調査自体の中立・公正性にも疑念が持たれている(1月22日、25日、30日付の当ブログ『「事業費比較」調査の怪』シリーズ参照)。その上でなお、こうした調査データを意見集約の参考資料にするということは、逆にファシリテーターそのものの「中立・公正性」にも疑念を生じさせることになりかねない。まとめ役としてのファシリテーターに最低限、求められるのは「二者択一の罠(わな)」にはまらないことなのである。
「まなび学園周辺」(平成28年の花巻市立地適正化計画)→「候補地を数箇所選定」(平成29年の新花巻図書館整備基本構想)→「JR花巻駅前を第1候補に」(令和4年9月定例市議会)…
立地候補地が当初の「まなび学園周辺」から一転、「JR花巻駅前」へと変わった背景には一体、何があったのか。この辺の経緯をきちんと説明してこなかったことが「意見の乖離(かいり)」の大きな要因であり、いろんな憶測を生むきっかけになっている。市側はいまに至るも「駅前」立地の理由として、「高校生など若い世代」の待望論を“金科玉条”にしている。しかし、今般の「高校生アンケート」(4月16日、5月10日付当ブログ参照)によって、若者世代が駅前に望んでいるのは「図書館」そのものではなく、それに付属するたまり場的な“空間”であることが明らかになったはずである。
それでもなお、市側が「駅前」立地にこだわるのであれば、市民が納得できるような合理的な説明をすべきである。仮にそれができない場合は中立を装うような意見集約は即座に止め、「駅前」の旗印を白紙撤回する以外にこの難局を打開する手立てはあるまい。決断の時である。
(写真は花巻城址に隣接する広大な病院跡地。手前の切り立った崖が「濁り堀」跡。前方に見えるのが生涯学習の拠点「まなび学園」=花巻城址に建つ花巻小学校側から)
《追記》〜私たちの民主主義は「恐るべき無関心」でいても大丈夫なほど、悠長な状況にあるのかどうか(映画監督、相田和弘)
「民主制の解体をもくろむ集団が路上でこれを臆面もなく実行する姿が目立つが、それ以上に警戒を要するのは、統治者たちがコソコソと「低温火傷(やけど)」のように進めている社会の破壊だと、映画監督は言う。市民の無関心と諦念(ていねん)をあてにするこの策略がもっとも嫌がるのは、個々人が「わーわー騒ぐ」ことだと。『熱狂なきファシズム』から」(5月22日付朝日新聞、鷲田清一の「折々のことば」)