「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??:はなめいと|岩手県花巻市のコミュニティ

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「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??


 

 上掲の写真を見ていただきたい。「最大スペックのラフデザイン」と名づけられた花巻市作成のイメージ図で、JR盛岡支社に提供された資料である。日付は2017(平成29)年7月10日。現在も立地予定地のひとつであるスポーツ店敷地跡に建つ図書館(当時の構想は3階建て)と橋上駅とが通路で繋がっているのが見て取れる。長い間の市政課題だった新花巻図書館と駅橋上化(東西自由通路)という二大プロジェクトは当初は実は「ワンセット」構想だったという動かぬ証拠である。「駅前か病院跡地か」―という立地場所の意見集約が大詰めを迎える中、すでに8年も前に新図書館の「駅前」立地が既成事実化していたことをこのイメージ図は物語っている。

 

 上田(東一)市政の政策基盤である「花巻市立地適正化計画」(2016年=平成28年6月策定)には駅橋上化事業とともに、新図書館の立地先については「(旧花巻病院跡地を含む)生涯学園都市会館(まなび学園)周辺」と明記されていた。ところが、翌年(2017年=平成29年)8月に策定された「新花巻図書館整備基本構想」の中では「候補地を数か所選定した上で、基本計画において場所を定める」と変更された。この候補地の拡大方針の直前に「ワンセット」構想が秘かに想定されていたことを考えれば、基本構想の策定は新図書館を「駅前」立地にシフトさせるための政策変更だったことが誰の目にも明らかである。

 

●「JR花巻駅橋上化(東西自由通路整備)及び新花巻図書館の駅前立地にかかるJR東日本盛岡支社との交渉記録文書すべて」(令和4年11月12日付)
 

●「平成29(2017)年の花巻市議会9月定例会の補正予算案(都市再生事業費)の質疑の中で存在が明らかになった、同年6月発足の『まちづくり勉強会』(JR東日本盛岡支社と花巻市で構成)にかかる復命書や会議録など関連資料」(令和5年3月30日付)―

 

 「まず、駅前ありき」を疑った私は上記2件の行政文書の開示請求をした。その結果、「花巻市まちづくり勉強会」(平成29年6月7日から同30年10月3日まで10回開催)や「花巻駅周辺整備調査定例会」(平成29年12月15日から同30年8月7日まで9回開催)などの組織の存在が明らかになった。駅前再開発を協議するJR東日本盛岡支社との間の非公開の合議体で、市側からは図書館を所管する生涯学習部と駅橋上化を担当する建設部が常に同席する形で進められた。この二つの組織の中では一体、何が話し合われたのか。判読可能な断片的な文脈の背後から双方が「ワンセット」構想に向け、合意形成に至る経緯が少しづつ見えてきた。

 

 「駅舎以外、市として図書館とともに機能付けするものは何か」(JR)、「さくらんぼ東根駅舎(山形県にある奥羽本線「さくらんぼ東根駅」)は2階通路が開放的に作られ、そのまま行政組織(図書館)につながっている」(JR)、「図書館と複合施設によって描くまちづく案と自由通路や駅舎の整備に関するオ—ソライズのタイミングが合うと分かりやすい」(市)、「上層階が図書、低層が多機能スペ−スかと。これらを一体で運営できる手法があるとよい」(JR)、「図書館と複合の事業で周辺の価値を高めていく。その分周辺の価値が上がり、税収をペイできる」(市)、「駅舎、図書館複合、店子等全体事業を紐づける理論武装が必要になる」(JR)…

 

 一見、順調に進みかけていた「ワンセット」構想だったが、新図書館の立地を優先させたい市側と駅橋上化を急ぎたいJR側との間に次第に隙間風が吹くようになった。後述(このシリーズの「下」)するが、この時期ある驚くべき図書館プロジェクトが降ってわき、上を下への大騒ぎに発展しつつあった。水面下での攻防を伝える、二つの会議とは別の復命書(2020年8月26日付)にこんなやり取りがある。

 

 「図書館整備との関連性で、図書館が決まらない限りは、自由通路整備は進められないということか。単独で進めることは可能か」(JR)、「図書館と自由通路はセットで考えるものであり、図書館の話が駅前で出来なくなった場合に、自由通路を単独で整備するかどうかを別に判断することになると思う」(市)、「市民的にも議会的にも自由通路整備をやろうとなったとしても、図書館が決まらないうちに、自由通路だけ先に進むのはまずいのか」(JR)、「現在は図書館とセットとすることで、事業効果が高くなるとしている。セットにすることで図書館的にも自由通路的にも良い」(市)―

 

 商工団体や農業関係者、PTAや同窓会、観光業者…。この機と前後して、駅橋上化の早期実現を求める各種団体の動きが活発になった。要請書の内容はほぼ同じだった。市議会の質疑で「図書館との一体化を狙うやらせ要請ではないか」という疑念が巻き起こった。当時の私のブログにこんな記述がある。「コロナ禍のうっとうしい日々、二人の男が地域に分け入り、その地のボスたちと何やらヒソヒソ話し合う姿があちこちで目撃された。“やらせ要請”の旗振り役と目され、一人は市長の後援会事務局長を名乗る革新系会派の現職市議で、もう一人は建設畑が長い副市長。この二人三脚ぶりはつとにまちの評判になり…」(2021年6月9日付)

 

 「駅前再開発」=「ワンセット」構想という基本原則は崩さないまま、駅橋上化(東西自由通路)事業は2024年(令和5)年6月、ひと足先に基本協定の締結にこぎつけ、令和10年度末の供用開始を目指している。その一方では、宮沢賢治とゆかりがある「旧総合花巻病院跡地」への立地を求める声も草の根ように広がりつつあった。病棟群が撤去され、霊峰・早池峰がその雄姿を現した瞬間、「図書館立地の最適地はここしかない」―。こんな声の高まりを背に複数の市民団体が賛同を求める署名運動に立ち上がった。他方の市側は遅れがちな図書館の駅前立地に向け、秘かに起死回生の打開策を模索し始めていた。

 

 

 

 

(写真は「ワンセット」構想のイメージ図。黒塗りだらけの文書の中で、このイメージ図だけがなぜか、開示された。うっかりミスだったのか)

 


2025.01.16:Copyright (C) ヒカリノミチ通信|増子義久
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