▼魂の贈り物
  気持ちが落ち込んでいる時、まるで心の内を見透かすようなタイミングで、その人は”言(こと)の葉(は)”を届けてくれる。今回のそれは批評家で随筆家である若松英輔さんの詩集『たましいの世話』―。「先に逝ってしまった大切なあなたへ」と帯にある。ペ−ジをめくると、「いのち ひとつ」と題する詩が目に飛び込んでくる。こんな詩である。 亡くなったのはわたしが愛したあの人で千人の中の一人ではないのです もう 抱き合えないあの人は街を歩く 千人をどんなに探しても見つかりません 亡くなった人が多いとか少ないとかそうした話しの奥には いつも たった ひとつのいのちを喪ったわたしのような人間がいるのを忘れないで下さい  「約束」「悲しい人」「はげまし」「しあわせのあかし」「慰めの方法」「別れ」「なぐさめの真珠」「透明な釘」…。こんなタイトルの詩編が34、並んでいる。たとえば、亡き妻が好きだったヨハン・パッヘルベルの「カノン」の旋律をそのひとつひとつに重ねてみる。「生きる」ということの意味を底支えしてくれる、かけがえのない時間である。   (写真は生前の妻が片時も離さなかったCD。若松さんの詩編にすう〜っと、溶けこんでいくよう)  
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2021.04.21:masuko

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