▼号外―「蜂の巣城」の攻防…ならぬ、子どものケンカ!?”図書館戦争”、泥沼化へ
  「図書館は単に本を借りる場だけではない。まちの将来を支える基盤であり、まなび直し”の場でもある」―。そう答弁する目の前の人物の顔を私は穴のあくほど見つめ続けた。今年1月下旬、上田「(青天の)「霹靂」(へきれき)市政が突然、「賃貸住宅付き図書館の駅前立地」(いわゆる、“上田私案”)を公表した際、この人物、つまり長井謙・副市長は図書館「コストパフォ−マンス」論(費用対効果)を持ち出し、「政策立案に当たっては、利益(もうけ)があるかどうかがポイントだ」と滔々(とうとう)とまくしたてた。私は居ずまいを正してもう一度、正面に向き直した。そこに座っていたのはまぎれもなく、「ジキルとハイド」その人だった。  花巻市議会の「新花巻図書館整備特別委員会」(伊藤盛幸委員長)が19日開催され、当局側から今度は「総合花巻病院の建物・施設の解体、土地譲渡に関する状況」と題する新しい資料が提示された。同病院が旧県立厚生病院跡に移転・新築したその跡地の今後の工程表に関する資料で、当該地も図書館立地の候補地のひとつである「まなび学園」周辺地域に位置づけられている。しかし、譲渡時期について病院側は、コロナ禍による入院患者の減少などを理由に「3年程度の期間で資金力を養った後で…」と将来の不透明性を匂わせている。果たせるかな、議員側から疑問の声が挙がった。「結局は立地が難しいという“ダメ出し”の資料ではないのか」(10月15日付当ブログ参照)―  「一般論として、市有地を有効活用する場合、たとえば図書館以外の利用の可能性も考える必要がある」―。市川清志・生涯学習部長のこの発言が火に油を注ぐ結果になった。「(10月15日開催の)議員説明会で、唐突にまなび学園周辺への“市庁舎移転構想”が示された背景には当局側のそんな腹案(ハラ)が隠されているのではないのか」…。「いや、仮の話として建物の“規模感”を分かっていただくため…」などと防戦するが、もはや手遅れ。大げさに言えば、蜂の巣をつついたような体(てい)である。「これだけではない。当局側の資料には自分たちに有利になるような新聞記事が添えられている。市民の声を反映した議会側のアンケ−ト調査も同時に併記すべきではないか」(「そうだ」の声も)…  ふいに、「反骨の砦」(1964年)というタイトルのテレビドキュメンタリ−の一場面が脳裏によみがえった。作家、松下竜一(故人)の傑作『砦に拠る』のテレビ化で1960年代、九州を縦断する一級河川・築後川水系をめぐる、13年間に及ぶ「ダム建設反対」運動(蜂の巣城闘争)を描いた作品である。その拠点が「蜂の巣城」と呼ばれた。鉢巻き姿のリ−ダ−、故室原知幸の絶叫調の演説がまだ耳の底に残っている。  「図書館は単に本を借りる場だけではない。(富士大学教授で、図書館アドバイザ−の)早川(光彦)教授がワ−クショップ(WS)で紹介した本にもそう書いてある」―。われに返ると、ある議員が一冊の本を振りかざして、熱弁を振るっている。あれっ、「ジキル&ハイド」氏もさっき、おんなじこと言っていた。だったら、”上田私案”を突きつけられた、その時にこの「図書館」理念を訴えれば良かったことに…。何を、いまさら。これを称して、”付け焼刃”という。件(くだん)の本は「知の殿堂」とも言われるニュ−ヨ−ク公共図書館(NYPL)をルポした『未来をつくる図書館』(菅谷明子著)。ところで、早川教授自身、この図書館が実は「公立」ではなく、NPO法人(非営利組織)の運営だということを理解していないみたいだった(8月28日付当ブログ参照)。とまあ、揚げ足取りはこの辺にしてと思っていたら、会場がざわめいている。  「市民に誤解を与えるおそれもあるので、委員長として“市庁舎移転構想”やその他の不適切な資料はHPからの削除を要求したい」―。紛糾した特別委はこうしてやっと、幕を閉じた。「子どものケンカみたいだな」と心底、そう思った。当局側も議会側も原点に戻って、出直すべきではないのか―。当局側は“上田私案”を白紙撤回し、議会側にはまさに「未来の図書館」を目指した独自の対案を示し、市民ぐるみの「図書館」論争を巻き起こしてほしいものだと切に願いたい。どっちもどっちだ。いい加減にして、目を覚まさんか!?  ところで、もう一方のご本尊はと言えば一…。前日(18日)の日曜日、大迫町で行われた絵画・作文コンク−ルの応募作品(「21世紀への提言」)などを収めたタイムカプセルの開封式で、上田東一市長はこう述べた。「25年前の人たちの夢、提言を確認し、それを踏まえて大迫のまちづくりに取り組みたい」―。1995年、当時の児童生徒らがふるさとへの思いや希望を表現した作品253点が四半世紀ぶりに掘り出されたが、図書館も未来への夢を託すタイムカプセルのようなものである。しかし、この夢を話し合うべく開催されたこの日の議会特別委の場に、特段の用務がないにもかかわらず、当の上田市長の姿はなかった。     (写真は神妙な表情で答弁する「ジキル&ハイド」氏こと長井副市長、その右は藤原忠雅副市長=10月19日午前、花巻市議会委員会室で) 
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2020.10.19:masuko

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