ハモコミ通信2016年6月号:壱岐産業

壱岐産業
ハモコミ通信2016年6月号


今月も、「まちネタ」(街で見つけたコラムに潜むコミュニケーションのネタ)をお楽しみください。


 

◎ 四つの特質

(前略)

 福島智さん (東京大学教授) は三歳で右目を、九歳で左目を失明、全盲となった。

 生来が楽天的、と本人はおっしゃるが、視力を失っても音の世界がある、耳を使えば外の世界とつながることができると考え、実際、音楽やスポーツや落語に夢中になっていた、という。

 だが、さらなる過酷な試練が全盲の少年を襲う。十四歳の頃から右耳が聞こえなくなり、十八歳、高校二年の時に残された左耳も聞こえなくなってしまったのである。

 全盲聾 (ろう) …光と音からまったく閉ざされた世界。福島さんはその時の状態を「真っ暗な真空の宇宙空間に、ただ一人で浮かんでいる感じ」と表現している。

 なぜぼくだけこんなに苦しまなければならないのか、これから先、ぼくはどうやって生きていけばよいのか…不安、恐怖、絶望。

 そんなある日。母親の玲子さんが福島さんの指を点字タイプライターのキーに見立てて「さとしわかるか」と打った。「ああ、わかるで」と福島さんは答えた。

 母親のこの指点字は壮大な転機となった。福島さんは真っ暗な宇宙空間から人間の世界に戻ってきたのだ。

(中略)

 すべての人の命は言葉とともにある。言葉のないところに人間の命はない。福島さんは身をもって、そのことを私たちに示してくれている。

 同時にもう一つ大事なこと、絶望の淵から人間を救うのは言葉である、ということ。どのような人生の難関も言葉という通行証を手にすることで乗り越えることができる、ということ。

 福島さんのお話を聞き、著書を読んで強く感じたことがある。福島さんには四つの特質がある、ということである。

一つは非常に明るいこと。二つはユーモアがある。三つは常に人に何かを与えようとしている。そして四つは、自分が主語の人生を生きている、ということ。

 そこには被害者意識は微塵 (みじん) もない。被害者意識で生きている人は何ごとであれ人のせいにする。人のせいにしている人に難関は越えられない。人生は開けない。

 この四つの資質こそ、福島さんをして、普通の人なら絶望してしまいかねない人生の難関を越えさせた秘訣であるように思うのである。

 


 

<コメント>

 先日、秋篠野友伽さんの講演会をお聞きし、この話との共通点を感じずにはいられません。

 秋篠野さんは、道徳は正しいか正しくないか、倫理は自然か不自然か、とした上で、一番不倫理なことは「心配すること」と喝破(かっぱ)しました。

 すべての出来事を「これがよい」と全肯定的に受け止めることが「自然なこと」である、と。一見不遇の状況に見えても、それはその時その人にとって必要があって起きている、と考える、というのです。のちのちふり返った時、それがあったからこそ今の自分がある、と思えたりするものなのだ、と。

 「人のせい」「状況のせい」にしない、という確固たるスタンス。このコラムでは、「自分が主語の人生を生きる」という表現が使われています。素敵な表現ですね。

 ところが実際は、大の大人(もちろん自分も含む)がよく人のせいや状況のせいにしたがるわけです。せめてそういう気持ちが表に出そうになったとき(言葉になりそうになったとき)、「おっと、あぶないあぶない」とコントロールできる自分でありたいと思いました。

 また、ユーモアというのは余裕の表れですよね。アップアップしそうになった時こそ、ひと呼吸おくゆとりを忘れずにいきましょう !!

 


 

 先日、大阪の展示会を見に行ったら、会場の一角に、「東日本大震災&熊本地震復興応援コーナー」というのがかなりのスペースを割いて設置されていました。

 あの震災から5年。ありがたいことにかなりの人でにぎわっており、食材など買い求めてくださっていました。おかげさまでイベントの度にそういうコーナーが設置されてきたこともあり、岩手・宮城・福島の産品についてはずいぶんその内容の充実も感じられました。熊本はこれからだと思いました。オールジャパン、いい感じです。


2016.06.03:Copyright (C) (株)壱岐産業 事務局
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