▼ハモコミ通信2021年7月号
今月の街ネタは1です。生活に取り入れたり、仕事で生かすなどしていただけると本望です。 ◎あずさからのメッセージ是松いづみ(福岡市立百道浜小学校特別支援学級教諭)梓(あずさ)が生まれたのは平成六年のことです。私たち夫婦はもともと障がい児施設でボランティアをしていたことから、我が子がダウン症であるという現実も割に早く受け止めることができました。迷ったのは上の二人の子たちにどう知らせるかということです。私は梓と息子、娘と四人でお風呂に入りながら「梓はダウン症で、これから先もずっと自分の名前も書けないかもしれない」と伝えました。息子は黙って梓の顔を見つめていましたが、しばらくしてこんなことを言いました。さあ、何と言ったでしょう? という私の質問に子どもたちは「僕が代わりに書いてあげる」「私が教えてあげるから大丈夫」と口々に答えます。この問いかけによって、一人ひとりの持つ優しさがグッと引き出されるように感じます。実際に息子が言ったのは次の言葉でした。「こんなに可愛いっちゃもん。いてくれるだけでいいやん。なんもできんでいい」。この言葉を紹介した瞬間、子どもたちの障がいに対する認識が少し変化するように思います。自分が何かをしてあげなくちゃ、と考えていたのが、いやここにいてくれるだけでいいのだと価値観が揺さぶられるのでしょう。さて次は上の娘の話です。彼女が「将来はたくさんの子どもが欲しい。もしかすると私も障がいのある子を産むかもしれないね」と言ってきたことがありました。私は「もしそうだとしたらどうする?」と尋ねました。ここで再び子どもたちに質問です。さて娘は何と答えたでしょう?「どうしよう……私に育てられるかなぁ。お母さん助けてね」。子どもたちの不安はどれも深刻です。しかし当の娘が言ったのは思いも掛けない言葉でした。「そうだとしたら面白いね。だっていろいろな子がいたほうが楽しいから」子どもたちは一瞬「えっ?」と息を呑むような表情を見せます。そうか、障がい児って面白いんだ。いままでマイナスにばかり捉えていたものをプラスの存在として見られるようになるのです。逆に私自身が子どもたちから教わることもたくさんあります。授業の中で、梓が成長していくことに伴う「親としての喜びと不安」にはどんなものがあるかを挙げてもらうくだりがあります。黒板を右左半分に分けて縦線を引き、左半分に喜びを、右半分に不安に思われることを書き出していきます。中学生になれば勉強が分からなくなって困るのではないか。やんちゃな子たちからいじめられるのではないか……。将来に対する不安が次々と挙げられる中、こんなことを口にした子がいました。「先生、真ん中の線はいらないんじゃない?」、理由を尋ねると「だって勉強が分からなくても周りの人に教えてもらい分かるようになればそれが喜びになる。意地悪をされても、その人の優しい面に触れれば喜びに変わるから」。これまで二つの感情を分けて考えていたことは果たしてよかったのだろうかと自分自身の教育観を大きく揺さぶられた出来事でした。☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆<コメント>読者の中にも、障がいを持ったお子さんと向き合っていらっしゃる方が少なくないと思います。パラリンピック開催のおかげで、テレビ等で様々な障がいについて取り上げられることが増え、これまで知らなかったことを知る機会になっていると思います。分け隔てをしない考え方に接したり、凝り固まった固定観念を打ち破るような場面に遭遇することで、心をもっと成長させていきたいと思ったコラムです。
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2021.06.27:壱岐産業

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