長井まちあるき物語 常楽院 宥日堂・客殿:長井市観光ポータルサイト
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長井まちあるき物語 常楽院 宥日堂・客殿
2013.11.05:Copyright (C) 読みもの長井物語
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魅力あふれる 深い建物を醸し出す風景に 足を運んで下さい
(資料:長井市史、神奈川大学工学部建築学科 西和夫 長井市歴史建造物調査報告書、文教の杜)
常楽院 宥日堂
常楽院本堂として現在も使われている建物です。本尊は不動明王、脇侍が文殊菩薩と普賢菩薩。常楽院は大正6年5月3日の大火によって全焼し、再建のための「大正六年六月弐拾五日」付けの「宥日堂建立勧進主旨」が本堂に掲出されています。また「大正七年七月、寫御祝宥日尊堂、新築、龍岡草耕道」と書かれた額縁があり、これによって建築年代は大正7年であることが明らかです。御住職からの聞き取りによると、「大正7年宥日堂として建ち、部屋4つに台所くらいの庫裏(くり)があったが、50年ほど前にその庫裏を潰して、現在の元長井警察署の建物をもらってきた」とのことです。
外観は、木造平屋建て、寄棟造り、屋根鉄板葺き、南面に破風(はふ)を付け向拝(こうはい)としています。北東隅にも破風が付き、普賢菩薩を外から拝めるようになっています。セガイ状に軒を出した板天井とし、外壁は真壁の漆喰仕上げ。北面のみ外部にトタンを張っています。建具は現在アルミサッシです。
間取りは、内陣と外陣からなります。客殿と角度を少しずらして接続させており、これが何のためであるかは不明です。本堂と客殿の境は板敷きと押入れとなっています。柱は4寸3分角、設計基準寸法は1間を6尺3寸とする芯々設計です。
建物はマツ材とスギ材両方が使われていますが、ほぼスギ材で作られています。天井は棹縁(さおぶち)天井、壁は白漆喰仕上げ。柱と天井縁の間に舟肘木(ふなひじき)を入れています。左右対称形の造りですが、北東隅に普賢菩薩を置き、外から拝めるようになっている点が独特です。内陣は板敷きで、西面、東面南側に半間空いている箇所は、元は壁であった痕跡が残っています。
北東隅 普賢菩薩を外から拝めるように
材木や構造を見ると、全体的に非常に急いで作られたようで、大火の後に早い再建が求められたと考えられます。本堂内には「安政六年己未星八月吉日」の年紀を箱にもつ、「大般若経」が一番から六番まで残されており、幕末期の大般若経があることも珍しく、建物と共に大変貴重な存在です。
宥日上人 火伏せの井戸 敷地内にある
客殿
元は大正9年築の長井警察署の建物
客殿は、かつて長井警察署であった建物です。長井警察署は「長井市史」によると宮栄町(現山形銀行長井支店)に大正9年に新築されましたが、場所的にも機能的にも適当でなくなったため、小出ままの上へ昭和34年3月18日に新築移転されました。御住職からの聞き取りによると「私が高校2、3年生のとき移転したので、約50年ほど前になる。栄町にあった警察署建物が競売にかかり、先代が規模を小さくして安く買い、現在の敷地に移転した」とのことです。建築年代としては、長井市史に書かれた旧長井警察署建設年代の大正9年となります。
外観は、木造平屋建て、寄棟造り、屋根鉄板葺き、南面に玄関があります。客殿は本堂と棟を少しずらして建てています。南西隅に下屋を出し、便所。外壁は下見板張り、上部は白漆喰仕上げです。建具は現在アルミサッシですが、一部木製建具が残っています。
間取りは西から水場、台所、付属部屋、便所、物置(4畳半)、客殿(10畳)、物置(12畳)、客殿(20畳)からなり、客殿と玄関の間に廊下があります。柱は4寸角、設計基準寸法は1間を6尺とする芯々設計です。
客殿(10畳)は、天井が棹縁天井、壁は白漆喰仕上げ。北面、西面、南面には雪見障子(しょうじ)、東面には襖(ふすま)4本を通しています。この襖は他のお宅からもらってきたとのことであり、この建物に合わせて作られたものではないために大きさが合っていません。南面、東面にはめられた透かし彫り欄間は警察署時代のものではなく、この建物に合わせて後付けされたものです。北面、南面の差物に根太(ねだ)の痕跡があることから、かつてここに中二階が存在したと思われるが、廊下側を見ると根太の相手となる痕跡がないことから、かつてここに中二階があったとは考えにくいと思います。移築の際に、材が入れ替わった可能性が考えられます。玄関は、警察署時代のままとのことです。床はモルタル仕上げ、壁は腰を縦羽目板張りとし、上部が白漆喰仕上げです。天井は棹縁天井。玄関外の石段も当初からのものです。
来歴、建築年代がはっきりしており、以前は警察署であったという建造背景も長井の歴史を知る上で貴重な存在です。
客殿と宥日堂は角度が少しズラして接続している