ニワトリが空を飛ぶ日:ヤマガタンAnnex|山形の農業〜農林水産

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ニワトリが空を飛ぶ日


 
 ご無沙汰でした。
 
もうじき・・といっても7月の中旬なのですが
創森社から「いのちをつなぐ自然卵養鶏」という名の本を出すことになり、
田植え後の夜はずっとその原稿書き、校正に没頭していました。
自然卵養鶏の七転八倒記。最後に700字の指定で書いた文章が下の文です。

 「ニワトリが飛ぶ日」

 1000羽のニワトリと3ヘクタールの水田の循環農業。けっして大きな規模ではないが、玉子と米を自分たちで販売することでなんとか専業農家として成り立っている。
 この我が家の農業を「菅野農園」と名づけた。キャッチコピーは“土、いのち、循環のもとに”。働き手は息子と私と妻の三人だ。妻は主に玉子の配達や集金を受け持っている。菅野農園の代表者は息子の春平。朝の6時になると判で押したように町のアパートから「出勤」してくる。
 「そんな風に育てた覚えはない」などと村の人たちには話すのだが、息子は村の中でもよく働くと評判だ。私が比較的外に出て行くことが多いので、その分を働かざるを得ないということもあるのだが、自分たちの暮らしをなるべく安定したものにしたいという思いからだろう。息子の連れ合いは休みのない息子の毎日を愚痴も言わずに送り出してくれている。

 何にでも、どこででも効率優先のモノサシが跋扈し、人が軽んぜられ、いのちが軽んぜられ、食も、農も、社会もいびつにゆがめられているかのように見える日本。当然のことのようにニワトリたちはゲージの中に入れられている。

 そんな日本の一隅の空を、ぼくのニワトリたちは飛ぶ。駆ける。遊ぶ。
こんなニワトリたちとともに暮らしている我が農園が立ち行かなくなったとき、そのときは日本農業のみならず、社会全体が窒息するときだと思っている。ヒラキナオリですね。

 たかが一個の玉子と軽んずることなかれ。一個の玉子を通して、私たちの社会が見えてくる。そして・・・だ。空を飛ぶニワトリたちが多数派になったとき、食も農も社会のあり方もきっと大きく変わっていくに違いない。


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