辛淑玉さんから:ヤマガタンAnnex|山形の農業〜農林水産
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いよいよ我が家も今日から稲刈りです。
「思いのほかとれているよ。」
「米の肌が悪い。」
さまざまな声を聞く。
我が家の米はどうなんだろう。
まず、もち米から刈り取っていく計画だ。
もち米の終了後、コンバイン、乾燥機、籾摺り機などをきれいに掃除し
うるち米と混ざらないようにした上で、「ひとめぼれ」の刈り取りに
はいって行きます。
辛淑玉さんから拙書への「書評」をいただきました。
恐縮しながら、掲載させていただきます。
『玉子と土といのちと』(菅野芳秀著)
伊江島の故阿波根昌鴻さんは、『命こそ
宝』や『米軍と農民』(岩波新書)の中で、
敗戦後、米軍が銃剣とブルドーザーで沖縄の
土地を収奪していたとき、米軍と闘う農民た
ちが陳情規定を作ったことを語っている。
その中に、「人間性においては生産者であ
るわれわれ農民の方が軍人に優っている自覚
を堅持し、破壊者である軍人を教え導く心構
えが大切である」と書かれていた。
破壊者は、破壊することで金を生み、力を
蓄え、戦争、資源の収奪、環境破壊を繰り返
してきた。そうした資本主義の暴走の結果、
いまの20代の若者は、生まれてから一度と
して社会が上向きの時代を経験していない。
先の見えない不安感は絶望を産み、厭世感が
再生産されてきた。他者との関係を遮断した
り、自死を選ぶものも少なくない。
人は土から離れては生きていけない。その
ことを笑いながら考えさせてくれた本が、菅
野芳秀著『玉子と土といのちと』(創森社)
だった。 日々のエッセイをまとめたニワト
リと玉子の本なのだが、これが読みながら爆
笑することばかり。
農家の後継ぎという立場から逃げたい一心
だった青春時代。沖縄での基地反対派住民の
生き方から、地元を逃げ出さなくてもいいよ
うに、そこで生きて変えていく道を選んでい
った著者。
身長191センチ、体重105キロ。自己
紹介は、「元プロレスラーです」とか「百姓
になる前は相撲取りでした」と笑いを誘う。
最近太ったことを気にしていると、母親が
「ダイエットで痩せようとする百姓がいるも
のか。たくさん食え、そしておもいっきり働
け。百姓は働いて痩せるものだ」と一喝。
3ヘクタールの水田と千羽の養鶏、そして
自家用の野菜畑を循環型農業で営んでいる。
田畑から出るくず米やくず野菜、そして雑草
はニワトリの餌となり、鶏のフンが野菜畑の
肥料となるのだ。自然卵養鶏の玉子は、化学
調味料や鰹節を入れなくても美味しくいただ
ける。
放し飼いにした鶏からは病気が殆どなくな
ったことなど、さまざまな実験を繰り返しな
がら、ニワトリの姿に自分を重ねる。狭い鶏
舎から広い空間に鶏を移したら、鶏たちは、
最初はおどおどキョロキョロしながら周囲を
見ていたという。
著者もまた、18歳でふるさと山形を出て
東京に来た。テレビで知ってはいたが、見る
もの全てがカルチャーショックそのものだっ
た。
例えば、団地に住む知人の家に行くと、お
風呂と便所が一緒になっている。こんな組み
合わせってあるのか!とのけぞる。きれいに
するところと排泄するところが一緒なんて。
家族がオフロに入っているときに、急にした
くなったらどうするのか。わけがわからない。
しかしここは東京。山形の実家が違っている
のはきっと遅れているからだと思い込もうと
する。
食堂に行くと、刺身の上にとろろがかかっ
ている料理がある。しかし、品書きの短冊を
見てもそれらしい名前がない。もちろん値段
もわからないので、恐ろしくて注文ができな
い。刺身がトロだということはわかったので、
トロととろろで、「とろとろろ」かと探して
みたが見つからない。あきらめて戻った数日
後、それが「やまかけ」であると判明する。
実態からあまりにもかけ離れたその名前に唖
然とする。
ラーメン屋に行ったときは、食べたことの
ないメニューを注文してみようと、ラーメン
と一緒に、メニューに書いてあった「さめ
こ」を頼むと、店の人が不思議そうに彼を見
た。そう、「さめこ」とは餃子のことだった。
餃子という字は、当時、田舎にはなかったの
だ。
そんなエピソードに包まれながら、鶏たち
の世界と人間世界を往復し、気がつくと一つ
の卵を通して社会が見えてきた。ふーむ。
それにしても、闘う農民はなんて愉快でカ
ッコいいんだろう。