かつて掲載した文章から:ヤマガタンAnnex|山形の農業〜農林水産
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かつて掲載した文章から
2011.09.17:Copyright (C) ぼくのニワトリは空を飛ぶー菅野芳秀のブログ
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「いまや、都会の人達は卵かけご飯は食べなくなっているんだよ。気味悪いから。箱根の旅館やホテルでも朝食に生卵や、温泉卵は出さないところが増えているよ。」
食に詳しい小田原の友人が教えてくれた。そうだろうね。
身動きのできないカゴに入れられ、添加物のかたまりのようなエサと予防薬漬けの毎日。カゴの下を見れば、健康なニワトリのフンとはまったく違う液状のゲリ便が・・。彼らの産み出す卵は・・・ストレスのかたまり・・・。
世界中の生き物達の中でゲージ飼いのニワトリたちほど不幸な動物はいない。羽を持っていても飛ぶことはおろか、広げることすらできず、足があっても歩くことができない。お日さまを拝むことも、風をうけることもなく、両脇に隣人の体温を感じ、対面に自分と同じように苦しむ同輩を眺めながら、長い一日を過ごしている。うわぁーぁ、やりきれないねぇ・・・。
私は農業に就いてから、そんな工業養鶏の現場を知り、抵抗力のない子どもや年寄り、病気がちな人、妊婦などにはゲージ飼いの卵は食わせられない、そうおもってきた。
我が家の玉子は、自然に近づけてニワトリたちを飼い、草や野菜などの緑餌をたくさん与え、放し飼いで充分運動させる。そんな中から産み出された玉子だ。昔の玉子もそうだった。
ドイツ全土から、2007年1月1日よりゲージ飼いのニワトリ達がすっかり消えた。全ては大地の上で飼育されている。ヨーロッパ全体では2012年1月1日から実施するという。いい話ですよ、人間であろうがなかろうが、幸せにつながる話は歓迎だ。EU加盟国の国民は昔の玉子を食べることになる。
彼らを生き地獄から救ったのは消費者運動だという。ドイツ政府に働きかけて実現した消費者運動の大きな成果。自分達が手にする食べ物の質を問題にするだけでなく、そのつくり手の状態にまで思いの範囲が及んでいるということか。
他方、日本の消費者運動はどうだろうか。残念ながら自分達が食べる卵の安全・安心を問題にしても、ニワトリ達をゲージから解放しようという声は聞いたことがない。思いはそこまで到達していない。自分(達)に、問題のない食べ物が手に入るなら、それから先のことには...ということか。
話が変わって、日本の米作りの現場。東北農政局が発表したH18年度の生産原価は15,052円/60kg。農家がJAに売り渡す価格は12,000円/60kg前後。作れば作るほど赤字が出てしまう。H19年もH20年も同じだった。こんな原価割れの米作りが数年続いている。農家の平均年齢は67歳。当然のことながら若がえる兆しはまったくない。いまさら転業もできないから・・という年寄り達の思いだけが継続の原動力だ。
ニワトリ同様、消費者の思いは生産現場まで到達していない。それだけではないけどね。
タマゴやお米に限らず、生産現場を知り、そことの関係をもう一度作り直すことから始めなければならないのではないだろうか。それにはまず、現実を知ること。それと、生きるうえで何が大切か、どのように生きたいのか・・を考える「哲学」を暮らしの中に。ここからですね。
だけどなニワトリたちよ。
かの国のように消費者運動にだけ頼っていてはいかんぞ!
自分でなんとかする道をみつけなければな。
自力解放の道を・・さ。
何ができるかって?
自分で考えるんだよ!