米鶴F-1の歴史と商標問題に関してのご報告(2014年末までの販売):米鶴コミュニティ

米鶴酒造株式会社
米鶴F-1の歴史と商標問題に関してのご報告(2014年末までの販売)



 日本酒の世界には、蔵元の技術の向上のために、市販の是非に関係なく出品ができる、「鑑評会」とよばれる日本酒コンテストがあります。鑑評会に出品される日本酒は、昭和30年代以前は造るのにも売るのにもあまりに高額になるため市販されていませんでした。ですから、当時の鑑評会出品酒は自動車の世界でいうF-1マシンのようなものです。鑑評会では銘柄を隠して審査されるため、有名無名にかかわらず純粋に味だけで評価されます。無名の蔵元にとっては自分たちの技術力を披露することができる数少ない舞台のひとつだったのです。

 米鶴でも長年、鑑評会出品酒を市販することはありませんでしたが、当時の鑑評会のひとつ、「全国酒類調味食品品評会」で1968年に山形県初のダイヤモンド賞を受賞します。それを記念してその翌年から鑑評会出品酒の市販にチャレンジしたのです。それが「米鶴F-1」のはじまりです。それ以来、米鶴の最高級酒として40年以上にわたり発売を続けてきました。

 1987年は、当時F-1レースに本田技研工業(株)がウィリアムズチームへのエンジン供給メーカとして参戦しており、そのウィリアムズホンダチームが年間コンストラクターズ王者、チームドライバーのネルソン・ピケが年間ドライバーズ王者の2冠を達成した年です。当時の米鶴社長である11代梅津伊兵衛が本田技研工業創業者の本田宗一郎氏に手紙と共に「米鶴F-1」を2冠制覇のお祝いとしてプレゼントしています。それに対して、本田宗一郎氏からはお礼状を頂きました。「米鶴F-1」は「世界のホンダ」にも知られる存在となったのです。

 日本酒における商標権の取得には難航しました。「F-1」という記号での商標登録は商標法の要件を満たしていないために登録できず、様々な形で登録を試みましたが、結果的には1994年に出願した「えふわん」というひらがなで1997年に登録されました。

 しかしながら2011年11月に、モータースポーツのF-1ブランドを管理しているフォーミュラワン・グループのブランド管理会社「フォーミュラワン・ライセンシング・BV」から、米鶴酒造が所有する日本酒での「えふわん」の商標権取消および米鶴F-1の販売停止を求められます。先方の主張は、フォーミュラワン・グループがこれまで築き上げてきたモータースポーツ界最高峰のブランドイメージにタダ乗りしているため、商標権侵害にあたるというものでした。

 米鶴最高峰の日本酒として「F-1」を40年以上も販売してきた実績と、「F-1」を最高峰の代名詞としての地位を築くために努力してきた自負もありましたので、私達としてもこれまでの実績をまとめた200ページを超える資料を提出すると同時に、正式なライセンス契約を結ぶことも視野に入れて誠実な交渉を2年間継続してきました。しかしながらこちらの努力の甲斐もなく、商品の存続も、ライセンス契約も、認められる見通しがないことを、2013年12月に先方から通達されました。

 40年以上の販売実績とF-1を名乗るのにふさわしい米鶴の最高峰に名付けた「米鶴F-1」は、商標権裁判を受ければ勝つチャンスもあったでしょう。しかしながら、私達は「米鶴にかかわるすべての人の幸せに貢献する」という理念を掲げており、私達にとってフォーミュラワン・グループは米鶴と深い関係にあるものと信じています。重要なのは、フォーミュラワン・グループが米鶴F-1の存続を友好的に認めることであると考えたのです。裁判で争う道は全く考えないことにしました。

 以上のことから、2014年3月10日現在の状況では、「米鶴F-1」の醸造元からの出荷は2014年12月31日までとし、2015年からは同じ名前での商品出荷は致しません。同じ酒質で違う商品名での販売継続についてはこちらをご覧ください。米鶴 純米大吟醸 天に舞う鶴の輝きのご案内

 しかし、私達の中ではせっかく築き上げた「米鶴F-1」が2014年で終わってしまうのは非常に残念でなりません。もし販売復活の機会が与えられれば喜んでそれに応えるべく、「F-1」の名にふさわしい最高品質の純米大吟醸を目指します。古くからの日本酒ファン、そして日本のモータースポーツのF-1ファンの方々からの要望が数多く集まれば、その機会は再び訪れるものと信じています。
 


2014.03.11:Copyright (C) 山形の地酒|米鶴酒造
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