まほろばの里芸能祭「延年の舞 競演」【高畠町】高畠町文化ホール「まほら」:置賜の宝発掘プロジェクト(仮称)
置賜文化フォーラム |
まほろばの里芸能祭「延年の舞 競演」【高畠町】高畠町文化ホール「まほら」
2013.11.21:Copyright (C) 置賜文化フォーラム
▼この記事へのコメントはこちら
|
ゲストさんようこそ
合計 63人
■記事数
公開 2,397件
限定公開 0件 合計 2,397件 ■アクセス数
今日 9,290件
昨日 3,123件 合計 11,380,604件 |
11月19日(火)に高畠町の安久津八幡神社に伝わる県の無形民俗文化財「延年の舞」をテーマとした「まほろばの里芸能祭 延年の舞競演」が高畠町文化ホール「まほら」で開催されました。
「歌舞伎にみる延年の舞」と題した第2部では、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんと三味線奏者の上妻宏光さんが「若き才―伝統の次世代への継承」と題しトークを展開し、
歌舞伎十八番「勧進帳」の中で弁慶が舞う延年の舞を、市川海老蔵さんが舞いました。
数多くの有形・無形の歴史的文化遺産をいまに継承する山形県・高畠町。
安久津八幡神社の秋の例大祭(9月)で奉納される「延年の舞」を広く伝えようと、町や町芸術文化協会などで実行委員会を組織し企画、文化庁の「文化遺産を活かした地域活性化事業」の支援を受け、開催されました。
室町期より安久津八幡神社に伝わる「延年の舞」を主題に、日本各地に継承される一級の伝統芸能から歌舞伎まで、日本の古典芸能の絆を結集した「延年の舞」
天平期に大陸から伝来した舞楽や散楽を源に、風流、歌舞音曲、猿楽、白拍子などが融合され生まれた「延年の舞」を通して日本の芸能に潜在する価値とその魅力に迫った、日本各地の延年の夢のコラボレーション。
取材してきましたので、安久津八幡神社の延年の舞をご紹介します。
◆安久津八幡神社
安久津八幡神社の文化遺産は、毎年5月3日には倭舞、9月15日には延年の舞が気品高く、古式豊かに舞われるなど、およそ千年引き継がれている貴重なものとなっています。
同神社文化財保存会がこの貴重な文化遺産を継承し、次世代に伝えていく活動を行なっています。
しかしながら、近年、特に倭舞や延年の舞のご指導者の高齢化や後継者不足等により、これらの舞の継承が危ぶまれておりました。
こうした中、昨年10月には、羽田空港国際線ターミナル江戸舞台での延年の舞の上演を行い、
そして、この日は日本各地で伝統芸能の継承に取り組んでいる方々と豪華ゲストとの「延年の舞」をテーマにした競演を行う機会が設けられ、このような大舞台の機会があることにより、新たに指導者や巫女や稚児の確保・育成に取り組むことができるのです。
保存会はもちろん、ご指導者や巫女や稚児たちも伝統芸能の継承に意を強くしたといいます。
◆振鉾式(えんぶしき)
それでは、延年の舞のご紹介です。
安久津の延年の舞は、世界遺産平泉藤原氏の仏教文化の流れを組むといわれています。
秋の例大祭に、五穀豊穣、国家安全を願って、地元の子ども達が舞楽殿で神や仏に舞を奉納します。
各地の舞が、中世以降伝えられなくなったのに対して、安久津の延年は古式をよく残しているところに特徴があります。
演目は、振鉾式、三躰舞、拝舞、眺望楽、太平楽など7曲があり、舞師の指導の下で練習を積んだ稚児が舞います。
まず初めに「振鉾式」です。
式のはじまりに、2本の鉾を持った舞人とよばれる大人が舞います。
◆三躰舞(さんたいまい)
延年の舞を披露する稚児は、高畠町立第一中学校の1年生の男児3名です。
置賜文化フォーラムでは、今年(平成25年9月15日)の延年の舞の様子もご紹介していますが、
今年の例大祭で舞った稚児ではなく、昨年舞を経験した稚児3名による披露です。
この3名は、前述でもご紹介したように、昨年10月に、羽田空港国際線ターミナル江戸舞台での延年の舞を上演したメンバーです。
今年は、伝承の関係で広く経験してもらおうと、6名の稚児が各演目を舞いましたが、
本来、延年の舞は稚児3名で舞うものなのです。
三躰舞は、稚児3名で舞います。
「一つ二つ三つ四つ五つ六つ七つと・・・」続く唱歌に合わせて、舞います。
◆拝舞(おがみまい)
稚児が舞う各演目は、出舞人の唱歌につれて舞います。
演目ごとに唱歌が違い、大変厳かで一定のテンポの唱歌となっています。
拝舞は、扇を持ち、合掌してその名の通り、拝むような姿勢で舞います。
◆眺望楽(ちょうぼうらく)
太平楽は、白い装束で頭にはちまきを締め、太刀を用いて舞います。
「ひーふーみーよーえーむーななーと・・・」と続く唱歌に合わせて、舞います。
◆太平楽(たいへいらく)
太平楽と同じ衣装で舞います。
「とごーとごーとごーとごとごとご・・・」と続く唱歌に合わせて、太刀を用いて舞います。
◆蛇取舞(へびとりまい)
蛇取舞は、中央に蛇のかたちをした布を置き、その周辺を舞います。
舞の前半に蛇退治を表現し、後半に退治した喜びを表現しています。
◆姥舞(うばまい)
最後を締めくくる演目は、姥舞です。
大人による舞になります。
奥州平泉毛越寺(岩手県)の「老女の舞」と同系のもので、稀にみる秘曲とされています。
ゆっくりと姥が動き、気品ある舞です。
昔の人は、姥の面の向く方向で、その年は豊作か不作か判断したそうです。
この上演まで、11月に入ってから週に数回、練習に練習を重ねてきたといいます。
舞の完成度も非常に高く、1000年伝わるこの舞が、現在にも継承されていること、そして地元の子ども達によって大切に守られていることに、改めて感動を覚えました。
同公演は抽選で無料招待されたものでしたが、山形県外からも沢山の応募があったそうです。
延年の舞を終えた稚児らは、800人超の超満員の観衆の喝采を浴びていました。
子ども達が演じる舞が、安久津八幡神社だけではなく高畠町を代表する舞になることを願って止みません。
◆練習風景の様子
◆延年の舞競演から感じたこと
「若き才―伝統の次世代への継承」と題した市川海老蔵さんによるトークの中で、
「前の代から引き継いだ荷物を、次の世代に渡す義務がある。
そして、日本の要(かなめ)は文化である。
伝統をどうやって守っていくかということは、日本人が伝統芸能の文化以外にも身近にある食事の文化や四季折々の文化を、理解を示して進んでいくことが、日本を更に日本らしくあるためには必要ではないか。
日本の文化の中で自分の魅力も知ることができる。
例えば、教育の中で子どもの頃から、日本舞踊に親しむだとか、そういった方向に日本全体が進んでいけば良いと思う。」
というお言葉が印象に残りました。
こども狂言クラブも取材している中で、和泉流狂言師山下先生も同じようなことをおっしゃっていたことを思い出しました。
日本の伝統芸能を守り続ける為には、日本の文化をしっかり理解し、親しむことが大事だと思います。
日本人のひとりひとりの意識が、伝統芸能が途絶えないようにするために必要なのではないでしょうか。
安久津の延年も、例大祭の他にこのような催しで多くの人々に知ってもらったことによって、舞の継承の危機を逃れたこともあるのです。
日本最古の舞踊として田楽や能・狂言の源流といわれる延年の舞。
歌舞伎の成立にも影響を与えたとされています。
市川海老蔵さんは、歌舞伎十八番「勧進帳」の中で弁慶が舞う延年の舞を舞いました。
「勧進帳」は、源義経と武蔵坊弁慶が都から欧州・平泉へ向かう途中、案宅の関を通り抜けて危機を脱した際に弁慶が舞います。
弁慶は比叡山で僧侶をやっていたので、延年の舞を知っていました。
関所を通過し、ほっとした気持ちが表れている舞だそうです。
ちなみに平泉の中尊寺には武蔵坊弁慶のお墓もあります。
中尊寺を訪れれば、源義経と武蔵坊弁慶のお話も聞くことができるので楽しいです。
安久津の延年の舞は、世界遺産平泉藤原氏の仏教文化の流れを組むといわれているので、
毛越寺の延年の舞もぜひ見に行ってみたいものです。
個人的には岩手県(イーハトーブ)の歴史が大好きなので、こんなところから繋がるとは思いませんでしたね。
何より高畠の安久津八幡神社に延年の舞が伝わっているからこそ、この競演が出来たと思いますので、伝統文化の魅力を町全体で守っていって欲しいと思います。
延年の舞を披露した中学1年生の男児は、
「緊張したけど、海老蔵さんと一緒の舞台で披露することができて嬉しかったです。」と言っていました。
この世代で伝統を守ること、意を強くしていることは大変立派です。
ぜひ、来年の安久津八幡神社の「延年の舞」も足を運んでくだされば幸いです。
現地で感じた感動は、その時間・その場所でしか感じられないと思います。
数ある伝統芸能を取材して参りましたが、多くの人に知ってもらうことが一番大事なことなのです。
私は各地の伝統芸能をこれからも追い続け、ご紹介していきたいと思います。
何より置賜の地に、歴史ある伝統が数々あることが素晴らしいです。
「置賜こども芸術祭2013」もよろしくお願いいたします。
置賜文化フォーラム編集員の文化リスがお送りしました。
○取材日 平成25年11月19日(火)
詳細:まほろばの里芸能祭 延年の舞競演
場所:高畠町文化ホール「まほら」
○取材協力 高畠町産業経済課
安久津八幡神社文化財保存会
安久津八幡神社(一戸芳樹宮司)
○関連記事 安久津八幡神社秋の例大祭「延年の舞」奉納
平成25年9月15日(日) 安久津八幡神社 舞楽殿
安久津八幡神社「田植舞」披露
平成25年6月2日(日) 米鶴酒造株式会社