映画「劔岳」:生涯学習ノート
生涯学習ノート |
映画「劔岳」
2009.07.02:Copyright (C) 年だからでなく年がいもなく
渋い…
観後感は時間がたつにつれて・・
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この映画は「火宅の人」や「八甲田山」を撮った名カメラマン木村大作が監督した作品
だから映像美が素晴らしい
自然の美しさ、自然の雄大さをこれでもか、と映し出している
CGやヘリコプターを使わないで撮ったそうであるが、過酷な自然の中でこれだけの映像を創り上げる監督とスタッフの情熱に敬服する
ストーリーは参謀本部陸地測量部として日本地図を完成させるために劔岳行きを命じられる測量手と山案内人を中心とする物語である
軍上層部と測量部、測量部と山岳会、山案内人とその息子の対立を柱に先輩測量手の応援や家族の愛などがからむ
ストーリーとしてのドラマチックの度合いは低い
映像のほとんどを劔岳山頂踏破までの映像で占める
山登りや自然の景色に関心のない人にとっては退屈してしまう映画にもなりかねない
この映画は劔岳の自然の素晴らしさを映し出しながら、観る人の人生経験や人生観、仕事観、自然観などを問いかけてくる映画かもしれない
映画のなかのセリフとして出てくる言葉
「何をしたかでなく、何のためにしたか」
「誰か行かねば、道はできない」
という言葉が印象に残る 考えさせられる
木村監督は68歳というのに10億という金をかけて初めてメガホンを握った
名カメラマンとしての評価があるのに監督という未知なる道へ踏み込んだのだ
これからさらに新しい道を切り開いてくれそうな予感がする
中高年齢者に、残された人生を自らの手で切り拓いていくという意欲と勇気を与えてくれる
またこの映画は、仕事は一人でできないということを伝えてくれている
測量部と山案内人、測量部と山岳会、山案内人とその息子の対立が調和、友愛へと変化し劔岳山頂踏破へと収斂していく
過酷な自然のなかでの撮影も全員のまとまりがなくしては進まなかったはず
強いリーダーのもとに心をひとつにして事をやり遂げるということのすばらしさを伝えている
同じ志のもと、和を大事にしながら目標に向かって突き進んでいく姿は日本人としての強みであったのだという思いを抱かせてくれる
人のあり方についても示唆してくれている
女房がハンカチを出して涙を拭きだした
あとで聞いてみたら、対立していた息子が父親へ出した和解の手紙に感動したということであった
息子は子供のとき父親の後姿から学んだことを思いだして父親の偉大さを理解したのだ
測量手の留守宅を守る若妻のけなげなさ、愛らしさ
山案内人の志と案内人の妻の夫に寄せる愛情と信頼感
測量部と登頂を競って敗れた山岳会の潔さ
それらはさりげない描写のなかに映し出され、明治から戦前まで持っていた日本人の人となりの素晴らしさを思い出させてくれる
最近キャリア開発と称して個人に対して価値観や仕事観などを問いかける
つい最近まで日本人はキャリア開発などとことさら取り立てなくても、社会や親から仕事を通して学んでこれたのではないだろうか
この映画を観てそう思った